2014年に世界初の量産燃料電池車(FCV)「ミライ」を発売したトヨタ自動車。航続距離は電気自動車(EV)よりも長く、燃料の補給にかかる時間も3分程度で済むというが、水素ステーションの少なさから、普及台数は2500台(2018年4月末)にとどまるとされる。
「水素社会」の到来に、政府は2030年までに全国で900か所の水素ステーションを整備し、80万台の燃料電池車を普及させることを目指している。次世代クリーンエネルギーとして期待される「水素」をテーマに、岩谷産業は毎年フォーラムを開いている。
水素ステーション、2022年までに80か所増設
2018年4月17日に「水素の広がる用途とその最前線」と題した、第12回 イワタニ水素エネルギーフォーラム東京(東京国際フォーラム)に参加した。
昨年の第11回に初めて参加したのだが、そのときのテーマは「水素社会の新たなステージに向けて」だった。燃料電池車(FCV)の現状と、これから先の展望を知ることを目的に参加したのだが、FCV以外のテーマは内容が難しく、後日、配布された資料を読み返すこととなった。このことが「水素」をFCVの燃料だけでなく、次世代クリーンエネルギーとして見直すきっかけとなった。
とはいえ、メディアが報じる「水素」情報はFCVと、その燃料を供給する水素ステーションのことばかり。水素ステーションをめぐっては、トヨタや日産自動車やホンダ、JTXGエネルギー、出光興産、東京ガス、岩谷産業、豊田通商、日本政策投資銀行などの11社が共同出資して、2018年3月5日に水素ステーションを整備する新会社を設立した。日本経済新聞(2017年12月12日付)によると、事業期間は10年間を想定。18年度中に都市部を中心に水素ステーションの整備計画をまとめ、22年3月末までに全国80か所に水素ステーションを設置する。
国内の水素ステーションは4月末現在で100か所あり、4年間で少なくとも2倍近く増えることになる。その水素ステーションを委託運営する一社が、すでに事業展開している岩谷産業だ。
「岩谷産業」といって、消費者がまず思い出すのは「カセットこんろ」だろう。冬に家庭で鍋を突っつくときには欠かせないのが卓上のカセットこんろ。そのトップブランドといってよい。そこに使うカセットボンベ(ガス)もまた同社製だ。電気を使用しないため、災害時の備えとしても重宝する。
岩谷産業は、そもそも家庭用などのプロパンガス事業で成長してきたが、いまや押しも押されぬ、エネルギー産業の担い手となった。その同社が現在、力を入れているのが、水素エネルギーというわけだ。