「改正酒税法」の施行(2017年6月1日)から1年が経過したが、酒類販売業者の経営状況は悪化しているようだ。帝国データバンクが「酒類販売業者の倒産動向調査」を2018年6月8日に発表。直近1 年の増加傾向が顕著という。
改正酒税法は、継続的に総販売原価を下回る価格で酒類を販売することやリベートの一部規制など、行き過ぎた廉価販売を規制するのが狙い。値上がり一方で、今春には各ビールメーカーが業務用を中心にビール系飲料を値上げするなど、厳しい経営環境が続いている。
値上げしづらく、居酒屋はツライよ
調査によると、酒類販売業者の2017年度の倒産件数は、前年度と比べて23.1%増の176 件と、4年ぶりに増加に転じた。
業種別にみると、「酒類卸」が前年度比50.0%増の12件、「酒類小売」は33.3%増の32件、「居酒屋」は18.9%増の132件と、いずれも前年度に比べて大幅に増えた。なかでも、「居酒屋」は東日本大震災の発生直後でピークとなった2011年度以来の水準となっている。
居酒屋や小売事業者では、改正酒税法が収益に及ぼす影響が注目されていた。施行からちょうど1年間となる2017年6月~18年5月の酒類販売業者の倒産件数は前年同期比16.7%増の182件だった(=別表参照)。
改正酒税法による規制強化で、卸売り価格が上がる一方で、「居酒屋などは、消費者の反応を考えると、大幅な値上げはしづらい」(帝国データバンク情報部)との見方がある。各ビールメーカーが業務用を中心に値上げに踏み切るなか、消費者に価格転嫁できない「居酒屋」などの今後の経営への影響が懸念される。
安売り競争はビール大手VSスーパーのせい?
一方、倒産の増加に伴い、負債総額も3年ぶりに増加に転じた。2017年度の負債総額は、前年度比66.9%増の131億3000万円だった。業種別にみると、「酒類卸」が221.2%増の53億5800万円と3倍以上に増えたほか、「酒類小売」が61.2%増の21億7200万円、「居酒屋」が15.4%増の56億円と、いずれも大幅に増えている。
負債を規模別にみると、2017年度は「1000万~5000万円未満」の倒産件数が前年度比28.2%増の132件で最多。構成比で75.0%と過去10年で最高となり、最低だった2009年度の52.9%と比べて20ポイント以上も上昇した。小規模の倒産が多くなっている。
インターネットの掲示板などには、
「酒類もいろいろ。ウイスキーなんかは原酒不足で出荷調整してるから安売りする理由がまったくない。ビール中心に考えすぎ。」
「それでも、客寄せ目的で最安狙って販売してる小売はあると思う。メーカーと卸を顎で使うコンビニやスーパーみたいな巨大小売が、安売りを無理強いし続けた」
「まともな酒でも安売りしてたら影響ある。激安店の大手のビールはヤバイと思う」
「ビールメーカー大手はスーパーとかへの値引き競争が激しかった。お互いが傷つくくらいに」
などと、一部ではその疲弊ぶりが吐露されている。
改正酒税法は、酒類の値下げ競争で疲弊した「町の酒屋さん」の経営を守ることが、その趣旨だったが、「そもそも大量仕入れで総販売原価が低い小売り大手などにとっては(法の)効き目がない。それどころか、メーカーや卸売りなどの値上げで町の酒屋さんは疲弊している」とされ、「かえって、改悪になった」との見方もある。