「泣き寝入りしろって言うのかい?」
M氏がやや気色ばんで私の話しを遮りました。
「泣き寝入りしろって言うのかい?」
「経営者として考えてほしいことは、社長が後ろ向きな仕事に時間を割かれるという会社としてのロスです。経営者感覚としては、騙し取られたと思しき費用をもったいないと感じる以上に、この先に発生する可能性がある社長自身の労力の浪費をもったいないと思うべきです。すでに失ったものはがんばって埋め合わせをすればいい。この先失われるかもしれないものは、そうならないよう全力で阻止する、それが経営者のあるべきでしょう」
あれから1か月。あの時の彼の不満顔が少々気になったので、「その後、社長稼業は順調?」とメールをしてみました。
「先日はいいアドバイスをありがとう。お陰さまで前向きな仕事に専念して、とりあえず船出は順調ですよ」
と返信をもらいました。
経営初心者は前にも後ろにも全力で走りがちなのですが、経営者自らが後ろ向きに走るロスはしっかりと認識しなくてはいけません。M氏は元々が資質の高い人なので、そこを踏まえてくれればきっといい経営者になると思っています。(大関暁夫)