勤務先である専門商社G社の大株主でありながら、諸事情あって長らく閑職に追いやられていた旧友M氏が、会長(前社長)から突然のご指名により社長に就任したという話を耳にしました。
このサプライズ人事は、低迷が続く業績の回復策として事業の軸足を従来以上に海外分野に向けることとなり、幹部社員で海外経験が最も豊富なM氏に白羽の矢が立った、ということのようです。
銀行から紹介されたコンサルティング会社
そんな話を耳にした矢先、彼から「話を聞いて欲しい」との声かけを受けて会食することに。突然の環境の変化にさぞやストレスが溜まってのガス抜き希望かと思ったのですが、意外や意外、血色はよくストレスどころか、むしろ逆に気力充実のご様子。自身が思い描く海外戦略の概要や、閑職にいる間にいろいろ気がつくところがあったのだろうと思しき社内整備策などについて、こちらがアドバイスする隙もないほど雄弁に語ってくれました。
「とにかく社内では長いこと存在を消された状態でくすぶっていたので、もうこのままサラリーマン生活は終わりを迎えるのかもしれないと諦めモードでいました。ところが、思いもかけず出番をもらうことになり、戸惑いはあるけれど本当にうれしい。今はあれもやりたい、これもやらなくちゃと、前向きなことばかりが次々アタマに浮かんでくる楽しい状況にいるわけです」
私にはここ数年間、彼の元気なく覇気のない姿ばかりを見続けていたこともあって、完全復活した自分を見てくれと言わんばかりの話しっぷりに、こちらもうれしくなりました。そんな彼には特にお困りごともなさそうだと思って聞き役に徹していたのですが、「実はちょっとアドバイスがほしいことがあって」と、本題らしきテーマに話題が移行しました。
「社長のイスに座ってわかったことは、経営者たる社長の目の前にある仕事は必ずしも前向きなことばかりじゃなくて、人知れず対処すべき後ろ向きなこともあるということ。簡単に言えば、前社長時代の負の遺産処理。前向きな戦略はドンと来いなんだが、後ろ向きな話はどう対処すべきなのかまだよくわからなくて......」
そう言いつつ話し始めたのは、前社長がサインしたコンサルティング会社と結んだ戦略コンサルティング契約の件でした。G社はここ何期か連続で赤字決算になったことで、取引銀行から中期戦略の練り直しを指示され、銀行を経由してコンサルティング会社を紹介され契約にいたったのだとか。
当初契約の1年間はすでに終了し、さらに先方から言われるがままに、戦略実行アドバイザリーとして半年の継続契約を結んでしまっているのだと言います。