元プロレスラーで創業者でもあるアントニオ猪木をはじめ、数々の有名レスラーを輩出した「新日本プロレスリング」の業績がV字回復していると、企業情報の東京商工リサーチが2018年6月1日に発表した。18年7月期の売上高が、東京ドームなどを満員にするドームプロレスが全盛期だった1998年の実績を、じつに20年ぶりに塗り替える見通しという。
好調な業績を支えているのは、「プ女子」と呼ばれる女性ファンの存在だ。
「肉体がカッコいい!」「肉体改造が凄い」
新日本プロレスリングの業績のV字回復を後押ししたのは、「プ女子」だ。東京商工リサーチによると、今では観客の3~4割が女性客という。
インターネットのプロレス好きが集まる掲示板などでは、
「肉体改造が凄いことになってる。せっかくの肉体美なんだから、試合中はシャツ脱ごうね」
「新日に来てしばらくすると、たいていの選手はかっこよくなるよね。本人にいちばん似合う髪型、衣装、イメージを身につけるようになる」
「選手のキャラが立ってる。でも、なんてっても肉体がカッコいい!」
などと、「プ女子」を含め、選手の肉体美に魅かれているようすがうかがえる。
最近は外国人ファンも増えているようで、新日本プロレスの公式動画配信サービス「新日本プロレスワールド」の10万人(2018年1月時点)の会員のうち、4割が外国人で、米国人のコアファンの加入が目立つという。
新日本プロレスのファン歴28年という東京商工リサーチの社員も、
「今の新日本はストロングスタイルが抜け、新しい楽しみ方が増えている」
と熱いコメントを寄せている。
債務超過から「復活」無借金経営を継続中
新日本プロレスは、アントニオ猪木がその土台を築き、藤波辰巳(当時)や長州力、前田日明らスター選手が黄金期を支えた、「昭和」の娯楽。その後、武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也の「闘魂三銃士」の活躍で、ドームプロレスが開花して、業績は1998年の売上高で39億3000万円とピークに達した。
ところが、2000年を境にスター選手の離脱、引退が相次ぎ、興行収入が大きく落ち込んだほか、PRIDEなどの総合格闘技ブームが若いプロレスファンを侵食。プロレスラーが総合格闘技で敗れたことが、入場者の減少に拍車をかけた。
2005年の売上高は13億円にまで落ち込み、その苦境をJASDAQに上場するユークス(大阪府堺市)が子会社化。徹底的なリストラで、利益重視の経営に変貌。棚橋弘至などの人気プロレスラーも、営業やプロモーション活動に奔走し業績回復に向けて耐えた。
2012年1月には、ゲーム大手のブシロード(東京都中野区、旧ブシロードグループパブリッシング)の傘下入り。同社が経営権を掌握する直前の11年の売上高が11億4000万円で、13年までは債務超過が続いていた。その後の営業努力とコスト削減の効果は大きく、5年連続で増収を達成。17年7月期の売上高は38億5000万円、純利益も2億8000万円を計上。純資産額は9億3000万円に回復した。
さらに18年5月23日には、日本コカ・コーラ副社長やタカラトミー社長を務めたハロルド・ジョージ・メイ氏が臨時株主総会で新社長に選任。メイ氏は、「プロレスはあらゆる世代がファンになる要素がある」と抱負を語っている。
18年7月期も業績は順調で、過去最高の1998年を上回る増収を見込んでいる。収益も改善し、無借金経営を継続中だ。