「老舗だから大丈夫」はダメ! 創業100年企業の倒産が最多に

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

ワシントン条約に泣いた動物園・水族館向け動物商

   時代の荒波に翻弄された例は、まだある。

   【仏具・神具などの木工業】

   名古屋市の「S産業」は、大正2年(1913年)創業の木工製品製造会社だ。神棚などの神具一式、仏像などの仏具一式を中心に、スノコやヨシズ、縁台なども手がけていた。先見性があり、全国のホームセンターに販路を広げ、早くから通販も展開していた。2014年には5億3000万円の売上があった。

   ところが、わずか2年後の2016年には半額の2億6000万円に減少した。非常に安い中国製品との競争が激化したためだ。リストラや経費節減に努めたが、改善することなく破たんした。

   【動物商】

   東京都の「A鳥獣店」は、明治41年(1908年)創業の鳥獣売買業者で、主に動物園や水族館向けに哺乳類、爬虫類、鳥類などを卸してきた。明治時代には取り扱った動物の病気の手当てまで行なったほどで、世界各国に調達のパイプを持つ老舗として業界では著名だった。特にキリン、ペンギン、アシカなどに強みを持ち、2011年には売上高約3億円を計上した。

   ところが近年、ワシントン条約などの規制が厳しくなり、動物の輸入が難しくなった。また、国内の動物園、水族館が飽和状態になり、需要が落ち込み、2016年には売上が5000万円に減少、事業をたたんだ。

   【農業用具メーカー】

   大阪府の「Y」は、江戸時代の享保3年(1718年)創業という300年の業歴を持つ農業用具メーカーだ。もともとは鍋・釜・鍬(くわ)・鋤(すき)などの製造が専門だったが、ほかにトラクターやパワーショベルも製造。さらに建設機械の部品、上下水道特殊大型継手、建築金具、硝子(ガラス)金具、自動車部品、鉄道部品......と幅広く金属製品の製造を手がけていった。

   3万平方メートルを超える本社工場に加え、マレーシアにも現地法人を設立し、海外進出も果たした。1991年には94億円の売り上げを計上。しかし、その後は取引先の多くが生産拠点を海外に移したため、受注が激減。300年の歴史に幕を下ろした。

   この3つのケースについて、飯島さんはこう分析する。

「時代の流れをどう読み、いかに変化に柔軟に対応していくか、経営者の手腕が問われます。そのためには市場が今どう変化しているのか、たえずリサーチして進むべき道を果断に決断することが大切です。厳しい言い方ですが、この3社はそれができていませんでした」

   それでは、老舗企業はどうすればよいのか。飯島さんは語った。

「考えてみれば、老舗企業2万8000社のうち、倒産したのはわずか1.6%。残り98%強はしぶとく生き残っています。戦争や2つの大震災(関東と東日本)という大変化を乗り越えてきたわけですから、厳しかった時代の経験を継承しくことが老舗の強みでしょう」

   なお、調査は帝国データバンクが持つ企業概要データベースCOSMOS2(約120万社網羅)を元に実施した。

姉妹サイト