LINEにつぶされた福島の名門印刷会社
【町の小売業】
静岡市の洋菓子店「R家」は、明治44年(1911年)の創業時には、「ハイカラなお菓子屋」として近隣に鳴り響いていた。クッキーなどの焼き菓子を主力に「アマンド娘」「駿河」「花八景」などのブランドが評判となり、1990年代後半には静岡県中部に15店舗を構えた。
しかし、地元での知名度が高くても、全国的な知名度を持つ県内ライバル洋菓子店に比べ、土産品需要が低かった。そこへ郊外型大型ショッピングセンターが近くに進出。同業他社の洋菓子店が出店し、一気に売り上げが落ちた。さらに、各店舗周辺にコンビニエンスストアが進出し、追い討ちをかけた。
「R家」の場合は、「町の老舗小売業」が凋落する典型的な事例で、飯島さんは、
「大型ショッピングセンターとコンビニの進出が、さまざまな老舗の小売店に大打撃を与えています。店内にお菓子を置いていますし、酒類の販売も規制緩和で自由になりましたから、『町の酒店』も追い込まれています」
と指摘する。
【印刷業】
福島県の「T印刷」は、大正3年(1914年)創業で、当時から最新鋭の印刷機を持っていた。この技術力から旧郵政省に食い込み、地方にありながら官製ハガキや年賀状の受注を受け、最盛時の2009年には約49億円の売上を誇っていた。ところが、その直後からハガキの需要が一気に減少、これといった手を打てないまま、倒産に追い込まれた。
飯島さんは、一芸に秀でた老舗企業が、時代の急激な変化に追いつけなかった典型例だと指摘する。
「メールが一般的になった後でも、ほんの数年までは、まだハガキが普通に使われていました。ところが、LINEの登場であっという間にハガキを使わなくなりました。結果論になりますが、T印刷としては予想もできない変化だったでしょう」