数字とビジョンの両立が活力を生む ソニーが打った「無目標計画」の一手(大関暁夫)

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   ソニーのトップが交代。新社長の吉田憲一郎氏の指示の下で、新たな中期経営計画が公表されました。

   この計画で、世間を驚かせたのが、営業の利益目標の明示がなく、あくまで定性目標中心の内容、いわゆる「無目標計画」だったのです。

  • 目標に追われてばかりで……
    目標に追われてばかりで……
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財務畑のリアリストが立てた「無目標計画」の狙い

   この中期経営計画に、市場は「先行きの見極めに必要な数値がない計画は評価に値しない」とばかりにマイナス反応を見せ、株価は軟調な動きを続けています。

   吉田憲一郎社長はこれまで財務畑中心に歩み、エンターテインメント畑出身で前社長の平井一夫氏をリアリスト的な立場から支えて、ソニーの財務的立て直しに尽力してきたという印象が強いです。それだけに市場の予想を裏切る意外感が、失望感につながったのではないか、という気もしています。

   しかし、この「無目標計画」。決して先行き不透明感から仕方なくした無目標ではなく、吉田社長なりに明確な狙いがあっての無目標であったようです。「(中長期的な)数値目標を定めると、成果にばかりとらわれがちになる」。吉田社長は、そんな言葉で今回の「無目標計画」の狙いを語っています。

   長年ソニーの下請けとして付き合いのあるH社のK社長が、「ソニーが無目標計画を発表」の記事を見て、自分なりの解説を披露してくれました。

   「ソニーはトランジスタラジオにはじまり、カセットテープレコーダー、ウォークマン、ハンディビデオ...... とにかく他社が考えつかない製品をいち早く世に送り出す、そんな企業でした。電気技術者だったウチの父はそんなソニーにあこがれと尊敬の念を持って取引をはじめ、二代目の私もその精神を胸に長年お付き合いをしてきました。しかし『失われた20年』と言われるソニーの低迷は、ソニーらしさであるオリジナリティの欠如と符合し、そこからの復活が今回の『無目標計画』の裏にはあると私は確信しています」

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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