その51 国民栄誉賞 「こんなものいらない!?」(岩城元)

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国民は受賞者を敬愛するよう、首相に押しつけられている

   国民栄誉賞に似た制度に、1966年に当時の佐藤栄作首相が作った「内閣総理大臣顕彰」というのがある。

   ただ、これは表彰対象が「国の重要施策の遂行」「災害の防止及び災害救助」「道義の高揚」「学術及び文化の振興」「社会の福祉増進」「公共的な事業の完成」に貢献したものとなっていて、国民栄誉賞に比べると、範囲が限られている。

   このため、通算本塁打数で世界新記録を達成した王貞治氏を表彰したかった福田赳夫首相が、対象を広げた国民栄誉賞を作ったのだと言われている。当然、第1回の受賞者はその王氏だった。

   以来、歴史の古い内閣総理大臣顕彰はすっかり影が薄くなり、事実上、国民栄誉賞の下位に位置づけられている。

   でも、僕ら国民の立場からすると、内閣総理大臣顕彰はその名前からして「首相が人気取りで勝手にやっていることだ。どうぞ、ご自由に」と傍観していられるから、まだ許せる。

   だが、受賞者を国民そろって敬愛するよう、首相から押しつけられる感じの国民栄誉賞は、どうも困ったものである。(岩城元)

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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