「国民栄誉賞」というものがある。1977年、当時の福田赳夫首相が設けたもので、最近では2018年2月13日に将棋棋士の羽生善治氏と囲碁棋士の井山裕太氏が同時に受賞し、安倍晋三首相から表彰状や記念品を手渡されている。
羽生氏は将棋の名人など7つのタイトルで前人未到の「永世七冠」を達成したこと、井山氏は囲碁史上初の7大タイトル独占を2度にわたって果たしたことが評価された。
時の首相の人気取りでしかない
国民栄誉賞の目的は、その表彰規程によると「広く国民に敬愛され、社会に明るい希望を与えることに顕著な業績があったものについて、その栄誉をたたえる」ことで、表彰の対象は「内閣総理大臣が本表彰の目的に照らして表彰することを適当と認めるもの」となっている。
前置きが長くなったが、僕はこの「表彰規程」がどうも気に食わない。
まず、これは時の首相がその人気取りのために使える制度である。もちろん、誰を表彰するかに当たっては、有識者とやらの意見も聞くのだろうけど、首相の意向が最大限尊重されることは、目に見えている。
しかも、受賞者は広く「国民」に敬愛されている人とのことである。僕もあなたも、受賞者を敬愛する「国民」の中に含まれている。
羽生さんや井山さんが成し遂げたことは立派かもしれない。だが、お二人を敬愛していない人もいるはずだ。将棋や囲碁に無関心の人もいるだろう。それなのに、その時の権力者の意向で、勝手に二人を敬愛させられてしまうのである。