安倍晋三首相が最重要法案と位置づける「働き方改革関連法案」が衆院厚生労働委員会で、自民党と公明党、日本維新の会の賛成多数で2018年5月25日、可決した。
法案検討の最中に参照された労働時間のデータに相次ぎミスが発覚。その信憑性が疑われ、立憲民主党など野党らからは「過労死を助長する」との批判が高まり、激しく対立したが、与党が強行採決した。 5月29日にも衆院を通過。6月20日までの今国会の会期内に成立する見通しが高まった。
「高プロ」盛り込まれ、過労死増える?
世の注目が日本大学のアメリカンフットボール部の「悪質タックル」に集まるなか、安倍首相の「肝いり」といわれる「働き方改革法案」が衆院厚労委で、怒号が飛び交いながらも「セレモニー」のように通過した。
もともと、この法案は、罰則付きで残業時間の上限を設ける規制強化策などが盛り込まれているほか、年収1075万円以上の一部の専門職を、労働時間の規制や残業代、休日・深夜の割増賃金の支払い対象から外す「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」を導入する規制緩和策が一つの焦点だった。
今国会の「目玉」である「高プロ」の導入は、安倍首相の悲願ともいえる。2007年(第1次安倍内閣)に「ホワイトカラー・エグゼンプション」として導入を目指したが断念。15年に提出した法案にも盛られたが、実現できなかったこともある。
それもあってか、衆院厚労委の高鳥修一委員長(自民党)や加藤勝信厚労相にとっては、是が非でも通過させなければ...... といったプレッシャーが重くのしかかっていたのかもしれない。
「高プロ」が適用されると、企業は対象となる労働者に年間104日以上かつ4週間で4日以上の休日を与えることになるが、これは週休2日で夏休みも正月休みもない計算になる。その一方で、場合によっては1週間休みなしで働いても、どこかで帳尻を合わせれば、問題ないと考えられている。
たとえば、勤務時間にインターバルを設けたり、深夜労働に回数制限を導入したり、1年に1回以上継続した2週間の休日を与えたり、時間外労働が80時間を超えたら健康診断を受けさせたりすることで、「健康確保措置」を講ずるようにする。
これに対して、立憲民主党などは「過労死を助長する」として高プロの削除を求めてきた。加えて、厚労省が提出した労働時間のデータにミスがあったことが発覚。「法案の根底を覆す」と大混乱となったが、与党はそれでも体面を優先させ、「力」で押し切った。
「国会前で騒いでいるのは、どう考えても長時間労働してないよな」
とはいえ、反対派は納得できまい。5月19日には日本労働弁護団が、高プロを含む働き方改革法案の撤回を求めて国会前で集会を開き、市民や労働組合の関係者らが約1000人参加した(主催者発表)。その力を得て、野党は政府・与党に「審議を尽くしていない」と迫ったが、政府・与党は「削除」に応じず、高プロを適用された人が撤回する場合の手続きを明記する修正を行うことで日本維新の党、希望の党と合意した。
インターネットの掲示板やツイッターなどでは、
「野党の肩を持つわけではないが捏造されたデータで法案をつくるってっどうなのよ?」
「何がどう問題なのか未だにわからない」
などと、野党を応援する声がないわけではないが、
「素朴に。過労死する人って1000万円もらってないんじゃない」
「まあ、お家芸ですからwwww」
「国会前で騒いでいるのは、どう考えても長時間労働してないよな」
「相変わらず見苦しいw いいかげんパフォーマンスやめろ」
「くっだらない茶番ですよね。だったらサボるな。対案出せ。審議しろ。子供のほうがキチンと話し合うわ」
「レベルが低すぎる(笑)」
「だったら休まなきゃ良かったねwww あしたからまた審議拒否かな?」
と、手厳しい声は少なくない。
これまでの野党の審議拒否で、与党議員がヒマを待て余していた国会中継の印象が強烈に刷り込まれているようだ。