指示を断れば、「自分がアメフト部にいられなくなる」
しかし、この「保身」が不祥事を招くという流れはリーダーだけの問題なのでしょうか。今回の日大アメフト部のケースでみてみれば、確かに監督、コーチという学生から見た絶対的な存在から出された指示・命令には逆らえない、という関係にはあったかもしれません。とはいえ、その誤った指示・命令には逆らえないということは、違反行為をした選手にとって絶対に覆しようのないことだったのか、という点に疑問が残ります。
選手は会見で、「監督、コーチの指示を断れなかった自分が悪い」と自身の非を悔いていました。これは、自分の意思をしっかりもって正しい善悪の判断に従っていたなら、断ることはできたということを示唆した言葉でもあります。
では、なぜ彼は現実には問題の試合で相手選手を「壊す」指示を断れなかったのでしょうか。それは彼の証言にあった、このままなら試合に出さない、練習もさせない、という厳しい現実をコーチから突きつけられたこと、さらに言えば、もしこの指示・命令を断れば、自分がアメフト部にいられなくなる、すなわち退部を余儀なくされる、そんな思いが湧き上がってきたことに違いありません。
今の地位を守らんとするまさしく彼なりの「保身」が、そこにあったのは想像に堅くないのです。