この(2018年)5月9日、東京で日中韓首脳会談が開かれた。日本の安倍晋三首相、中国の李克強首相、韓国の文寅在大統領が出席した。
それを伝える翌日の英字新聞を見ると、中国の首相は「Li Keqiang」、韓国の大統領は「Moon Jae‐in」で、日本の首相は「Shinzo Abe」と書かれている。これが気になって仕方ない!
自ら名前を「逆さま」表記する日本人
中国の李克強首相、韓国の文寅在大統領の両首脳の名前は本来の「姓 → 名」の順で書かれているのに、日本の首脳だけは逆の「名 → 姓」である。なにも安倍首相が「自分の名前は逆さまに書いてくれ」と頼んだわけではないだろう。
だが、日本の英字新聞に限らず欧米の新聞などでは、日本人の名前はこのように書くのが普通になっている。
ちょっと前にスウェーデンで卓球の世界団体選手権があった。ユニホームの背中にローマ字で書かれた名前は、中国や韓国、北朝鮮の選手はやはり「姓 → 名」の順で、日本の選手は「名 → 姓」になっていた。
このユニホームは日本側が自分で作ったものだろう。それなのに、なんで堂々と本来の名前を名乗らないのか。
いつ頃からだろうか、ローマ字では名前を欧米流に表現する習慣が、多くの日本人に染み付いている。おかげで、欧米人のほうも、日本人の名前の言い方、書き方は彼らと同じだと思っているようなのだ。
実に情けない例がある。8年前のことだが、参議院議員選挙の真っ最中に、当時の「内閣総理大臣・民主党代表」の菅直人氏が新聞の1ページをまるまる使って主張を述べていた。
その中身はともかくとして、驚いたのは、主張の最後にはまず「Naoto Kan」との署名があり、その下に活字体の漢字で小さく「菅直人」と記してあったことだ。
日本の首相が日本の新聞で、日本の有権者に向かって「Naoto Kan」と名乗るなんて、あなたはいったい何を考えてるんだ。僕はブログでかみついたが、しょせんは「ゴマメの歯ぎしり」だった。
Ohtani Shohei選手よ、なんとかして!
欧米人にとっても、こうした日本人のやり方が好ましいものとは決して言えない。マーク・ピーターセンさんという米国人の日本文学研究家が、日本人から「ソウセキ・ナツメ」と言われたときには、それが「夏目漱石」のことだとは、すぐには思いつかなかった。「Genji Hikaru」に至っては仰天した。
彼の著書「日本人の英語」(岩波新書、1988年初版)に出てくる話である。
自分の名前が勝手に変えられてしまうなんて、屈辱的である。どうすれば、本来の形に戻せるか。難題であるが、ふと思いついた。いま野球の大リーグで人気沸騰中の大谷翔平選手に頼んではどうだろうか。
彼も気の毒に米国では「Shohei Ohtani」と呼ばれている。もし彼がそれを悔しく思っているのなら、「私はOhtani Shoheiである。正しく私の名前を伝えないメディアの取材には応じない」とでも宣言してもらうのである。
彼の知名度から言って、少しは効果が期待できるかもしれない。(岩城元)