有期契約のパートやアルバイトの無期雇用への転換申請を可能にした「無期雇用転換ルール」の適用が2018年4月からはじまったが、すでに無期雇用への転換を「希望した人」は、わずか3%だったことがわかった。
ディップ(東京都港区)が運営する求人情報サイト「はたらこねっと」のユーザーを対象に調査(2018年5月14日発表)。ルールの認知度も、31%にとどまった。
認知度は3割にとどまる
「無期雇用転換ルール」は、2013年4月の労働契約法の改正で、同じ使用者(会社)とのあいだで有期労働契約が5年を超えて反復して更新された場合、契約社員やパート、アルバイトからの申し出によって、所定の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる制度。「2018年問題」ともいわれる。
5年経った今年4月は、この制度を利用した有期雇用の労働者が、初めて無期雇用として働きはじめたわけだ。
ところが、このルールの認知度はまだ3割にすぎない。求人情報のディップの調査によると、1369人の有効回答者のうち、無期雇用転換ルールを「よく知っている」は9%、「少し知っている」が22%だった。一方、「まったく知らない」と答えた人は42%、「あまり知らない」は26%だった。
また、無期雇用転換への賛否を聞いたところ、「賛成」は57%、「反対」6%と、賛成が圧倒的に多かった。ただ、「わからない」との回答も37%と多く、認知度の低さが響いているとみられる。
賛成の理由をみると、「雇用の安定が保証されるため」が33%で最多。次いで、「同じ仕事を続けられるため」が18%、「契約更新の手間がなくなるため」「長期的なキャリア形成がしやすくなるため」「待遇改善が見込めるため」がそれぞれ12%と続いた。
無期雇用転換を「希望したい」人は54%で最多。その一方で、「すでに希望した」人は3%となり、無期雇用転換への浸透度の低さがうかがえる。
給料や待遇面は変わらない
調査に寄せられたコメントでは、「無期雇用転換」を希望する理由について、
「次の更新があるのかないのか常に派遣切りの不安があるため、無期の契約ができれば更新ごとの不安もなくなるかと期待しています」(ととさん)
「いつ雇止めをされるのか不安が消えない状態で働き続ける負担がなくなるのがいいと思う。自分の能力や条件にあった職場なら長く働きたい」(Ukkaさん)
「正社員に登用される機会が増えると思うため」(ぴっころさん)
などと、正社員への道が拓け、安定雇用につながることへの期待がある。
ただ、
「ルール自体はいいと思うが、個人的には短期の仕事をしたい。同じ仕事を長くしたくないので」(雪さん)
「自分には派遣でいるメリットのほうが今は高いから」(まちゃよさん)
など、「現状のままでよい」との声も。
その一方で、「希望しない理由」をみると、
「正社員と同じ仕事、同じ時間働いているのに、給与やボーナス、福利厚生においても不利だから」(まゆひめさん)
「正社員とは違うので、ボーナスがないから」(tosiさん)
といった給料や待遇面への不満がみられる。無期雇用に転換しても、こうした不満は解消されないと考えているようだ。
会社側も「対策」を講じているようで、ある百貨店では有期雇用の契約期間をこれまで1年ごとの更新を、この4月から6か月ごとの契約に雇用期間を短縮した。有期契約のパートやアルバイトが会社に無期転換を申し出た場合、会社はこれを断ることができない。そのため、雇用期間を短縮することで、職場の人員を調整しやすくしたとみられる。
ディップの広報担当者は、「まだまだ認知度が低いことはありますが、労働者側の理解が進めば(無期雇用への転換を)希望する人は増えてくると思います。その一方で、今回の調査からは企業側の課題として、給与や待遇面の改善への対応が求められていることが浮き彫りになりました」と話している。