のるかそるか!? 400万円をかけた保険営業マンとの戦い(北条かや)

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   最近、思い切って「年金保険」とやらに入ってみた。

   現在31歳の私が、これから毎年20万円ずつ、20年間積み立てる。51歳で満期を迎えた暁には、そこから10年間にわたって毎月数万円ずつ「年金」が受け取れるという仕組みだ。

  • 「人生100年時代」への備え……
    「人生100年時代」への備え……
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100万円預けても10円しか利子がつかない

   「人生100年時代」ともいわれる昨今、私は将来に不安しかない。 国民年金はおそらく70歳、いや80歳くらいまでもらえないだろう。玉の輿に乗る予定も才能もない。

   老後の資産は自力で築くしかないのだ。

   そうなると、まず思いつくのは貯金だが、この低金利じゃ100万円預けても10円程度しか利子がつかないので、できる範囲で殖やそうと企んでいる。

   さて、この年金保険は、20年間コツコツと納め続ければ、積み立てた分以上の年金がもらえるというもの。オトクといえばオトクだが、途中で解約すると、それまで積み立てた分より圧倒的に少ない額しか戻ってこないので損する。

   順調にいけば合計約400万円を納めるが、解約さえしなければ、銀行に預けておくよりは何倍も「利子」分が大きい。お金を塩漬けにしておくよりはマシだろう。

   さらに、保険料をクレジットカードで納めれば、カードのポイントもつく。400万円を納めるとしたら、4万円分のポイントがたまる。保険会社の回し者では決してないが、ポイント分だけで利子の100倍。どうして今まで、銀行に預けっぱなしにしていたのだろう。

営業マンの饒舌トークには乗るまいぞ!

   もちろん、自分に必要な老後資金を考えると、こんな年金保険に入ったくらいで安心するわけにはいかない。しかし、私がつくづく「契約してよかったなあ」と思うのは、お金に関する知識がついたことだ。

   契約するまでに、多くの終身保険や投資商品を比較検討したのが非常によかったのである。

   ケチなうえに、これまでに一度、他人に200万以上を投資して返ってこなかったという大失敗をしている私だ。保険会社の口車に乗せられ、ホイホイと契約するような気前のよさはない。

   こんなドケチが石橋を叩いて渡るのだから、営業マンはそうとう面倒くさかったと思う。「あなたには、このプランがいいですよ」と言われても、数か月は検討する。ケチのプライドにかけて、そうやすやすと判を押すわけにはいかないのだ。

   営業マンが「今日こそは契約を取るぞ」と訪ねて来てくれても、

「うーん...... この『年金+医療保険プラン』って、51歳で満期ですよね。51歳までに多額の医療費がかかるリスクは低いから公的な医療保険で十分だし、余計な保険プランはつけないでいいです。独身なので、もちろん生命保険プランもいりません」
「なるほど、おっしゃる通りです。では......」

と、営業マンも諦めない。

「ドル建ての終身保険はいかがでしょう。リスクは高いですが、10~15年の長期運用ができていいですよ。300万円運用すれば、数年ごとに1.5万円受け取れます」

と、別の商品を勧めてくる。

   私はまた、持ち帰って検討する。そして1か月後、

「いろいろ調べましたが、手数料もかなり高いし、そもそも今は円高なので買い時ではないですよね?」

と問うてみると、営業マンはにわかに渋い表情になり、

「そうですね......正直言って買い時ではないです」

   一気に消極的になるではないか。

   ならば、最初からそう言ってくれればいいのにと思ったが、彼らも売らなきゃ商売にならないので仕方ない。

   いろいろとあったが、結局は無難でリターンの少ない個人年金保険に加入した。美辞麗句に踊らされず、リターンを求めすぎないでよかったと思う。なにより、これまで資産形成といえば貯蓄くらいしか思いつかなかった自分が、少しは金融商品に詳しくなったこと自体が「リターン」だ。今後は少しずつ株式投資もはじめてみようかと思っている。安心な老後への道のりは遠い。(北条かや)

北条かや
北条かや(ほうじょう・かや)
1986年、金沢生まれ。京都大学大学院文学研究科修了。近著『インターネットで死ぬということ』ほか、『本当は結婚したくないのだ症候群』『整形した女は幸せになっているのか』『キャバ嬢の社会学』などがある。
【Twitter】@kaya_hojo
【ブログ】コスプレで女やってますけど
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