ある先輩経営者との出会い
聞けばこの特訓もあるキッカケがあったのだと言います。それはとある先輩経営者との出会いでした。
「私は今の仕事を始める時に、コンサルティング会社時代にお世話になった多くの有名、無名の経営者の方にお話をうかがいにあがりました。その折、企業経営に関する多くの著作でも知られる大経営者でもあるI先生から、貴重なお話をいただいたのです。先生は会社経営に財務的な視点は不可欠と常々著作にも書いていた方だったのですが、じつは会社経営を始めた頃はまったく財務音痴だったのだと。そこで一念発起して、密かに専門学校に通い財務・経理の勉強を積んで、大経営者への基礎を築かれたというのです。何事においても経営者が苦手分野を持ってはダメだ、それが会社のアキレス腱になると、教えられました」
その折に、S氏はさらに経営者の努力は陰でするものだとも教えられたのだと言います。「努力する姿を見せて周囲から褒められるのは、社員のレベル。経営者の努力はむしろ見られて恥ずかしいものと心得よ。社員のうちは努力をすることで評価を得られるが、経営者になれば結果がすべてである」と。じつに的を射た言葉です。
「I先生がおっしゃる通り、経営者の弱点はイコール会社の弱点です。すなわち、経営者の努力が外に見えるのは、会社の弱点を外にさらしているようなもの。私は昔からの商売柄、人一倍多くの経営者の方々にお目にかかってきましたが、名経営者と言われる方ほど、必ずと言っていいほど陰で人一倍の努力をされている。どんなに才能や才覚のある経営者でも、自分の弱点を知りながら、それをないがしろにしたり人任せにしたりしている人は、どうしてもその方の会社の成長が一定の踊り場から抜け出せずに止まってしまのです。私はそんな姿をたくさん見てきましたから、先生の言葉は本当に重く胸に響いいたのです」
大経営者の教えを守り、サラリーマン企業コンサルタントから一代で一部上場企業をつくりあげられたS氏の言葉であるがゆえに、大きな説得力もって私にも届きました。
経営者たるもの、弱点克服に向けた陰の努力を怠るな。私も一経営者の端くれとして、心して受けとめさせていただきます。(大関暁夫)