同僚や後輩から、「5月病」のような雰囲気を感じたとき、どのように接したらいいのか? 教えてほしいじぇい。
「やる気のなさ」は事実に基づいて判断する
カス丸くん! そんな雰囲気の方がいるんですか?
そういう雰囲気を感じた場合には、まず接し方を考える前に、職場で起きている問題を洗い出してみてください。それは、なぜ「やる気がない」ように見えるのかを考えるということです。
「やる気の低下」といった雰囲気を感じたという場合、それは単純に雰囲気ではなく事実として職務に何らかの影響が出ている場合が多いですし、また事実に基づいて「やる気がない」と判断しているはずだからです。
たとえば、研修への参加態度が悪いとか、「ほうれんそう」(報告・連絡・相談)ができなくなったとか、遅刻が増えたとか...... そのような事実に基づいて「やる気の低下」を感じている場合が多いのです。
このような事実を認識したうえで、声をかけていきましょう。
声かけは、できるだけ自分の言葉で心配を伝えることを心がけてください。
たとえば、「最近連絡が遅くなっているから、何かあったのではととても心配に思っている」とか、「5月に入って遅刻をするようになっているけど、体調不良や何か事情があるなら力にならせてほしい」といった感じで、このような事実があって、私はあなたのことがとても心配なんだ、ということを伝えてあげてください。
責めるのでもなく、解決策を与えるのでもなく、「現状」を受け入れてあげることが大事なのです。
絶対にやってはいけない接し方がなにかあるんなら、教えてほしいじぇい。
とにかく、一方的に責めるようなことや、人格を否定するようなことを、やめることをオススメします。
一方的に「責める」というのは、「みんなができているのに、なぜ、おまえはできないのか?」といった指摘や、「ちゃんとしろ!」などと本人もそう考えているようなことを指摘することを指します。
なぜできないのかを問われても、わからないから足踏みをしていることもありますし、ちゃんとしたいと、すでに自分を責めているときに、相手から追い討ちをかけられると、ますます追い込まれてしまうということもよくあります。「責める」という行為は、自分の都合や自分の評価を相手に押し付けるという面もありますから、相手のことを考えない接し方といえると思います。
また、人格を否定するようなことというのは「お前はやっぱりトロいな。」といった発言を指します。度が過ぎるとパワハラ認定がされる可能性もある為、本当に注意が必要です。
もし、トロいなという指摘をしたいと頭をよぎったらどうしたらよいのでしょうか。
私はまず、トロいと考えるに至った事実を考え、その上でポシティブに捉えてみて下さいとお伝えしています。たとえば仕事一つひとつの完了が遅く、研修の場でも与えられた課題を常に時間内にこなせないという事実があったとします。
しかし、この事実から考えられることはトロいというネガティブな評価だけでなく、丁寧な仕事をすることが信条であり、ミスが少なく完成度の高いものを仕上げることのできる人なのかもしれないというポシティブな面も必ずあります。
このように、絶対にやってはいけない接し方としては、「相手を受け入れない態度」であるということを、私は一番注意してほしいと考えています。
後輩が「会社を辞めたい」と言ってきたら......
もし、「5月病」をこじらせた部下や後輩が「会社を辞めたい」と言ってきた場合、どう対応したらいいきゃすか?
まずは「会社を辞めたい」と言ってきたとしても、事情も聴かずに受理したり、むやみに引きとめたりしないことをオススメします。
それは重要なことが、「なぜ、会社を辞めたい」と考えるに至ったのかであって、会社を辞めるかどうかの単純な問題ではないことが多いからです。
4月の1か月を一生懸命に過ごすうちに、人間関係の不安や、仕事上での得手不得手が明確になってくる場合は少なくありません。ただ、それがうまく表現できずに「辞めたい」という発言になってしまったというケースがとても多く感じます。
本当に実現したいのは、辞めることではなく、「まったく折り合わない上司をどうにかしてほしい」という話だったり、「配属先での仕事があまりにもできず、前の仕事に戻りたい」といった話だったりと、本心が別のところにあることが意外とあるのです。
そのため、辞めたいと言ってきた人に対しては、その思いを一緒にひも解くようにかかわっていくことが望ましいといえます。当然、現場では仕事しながらになりますし、時間も限られていますから、せめてその人の言い分を聞いて受けとめてあげる。そんなかかわりができるといいかと思います。
また、もしかしたら体調やメンタル面での不調を疑うケースもあるかもしれません。「やる気がでない」という抽象的な症状でも、医者としては適応障害や不安障害といった診断を出す場合も多いのです。
もし、「メンタル不調」で辞めたということになれば、企業イメージに傷がつくことにもなりかねません。たとえば、最近寝れているか? といった単純な質問でも、心の健康状態を推し量ることはできますから、常にメンタル不調や体調も意識しながら、かかわっていくことができるとよいでしょう。(木村俊夫)
家庭教師・公務員試験対策講師を経て、30歳で小説家を志し活動したが失敗し挫折を経験する。そんな中での再出発がキャリアコンサルタントだった。とくに過去の経験から自分のことを自分で決められないケースを多く扱ったことから、今後は一人ひとりが自身と向き合うための手伝いがしたいとの強い思いで現在の道を進んでいる。2018年から、一般社団法人セルフキャリアデザイン協会の理事。https://self-cd.or.jp/