日本航空(JAL)が格安航空会社(LCC)の設立を検討していることが2018年5月8日に明らかになった。JALはすでに、豪カンタス航空などが出資する「ジェットスター・ジャパン」に出資している。ジェットスターが日本国内や東アジアを中心に就航しているのに対して、新会社では中長距離路線を中心に展開したい考えだ。
現時点では日本を発着するLCCは近距離が中心だが、ここ数年でハワイやインドネシアといった中長距離路線も増えてきた。JALの参入で競争が激化しそうだ。
「北米や欧州の中堅都市向けの路線を検討しているようだ」
日本では2012年が「LCC元年」と言われ、全日空(ANA)系のピーチ・アビエーションなど多くのLCCが国内に参入したが、10年に経営破たんしたJALは経営再建の途上だった。さらに、公的支援で競争環境が歪められたという指摘があったことから、国交省は「8.10ペーパー」と呼ばれる文書を出して、事実上、新規路線の開設を制限してきた。
こういった事情からJALのLCCへの取り組みは抑制的だったが、「8.10ペーパー」の効力が17年3月末に切れたこともあって、本格参入に乗り出した模様だ。5月8日付の日本経済新聞では、JALがすでに運航している国際線路線との競合を避け、「北米や欧州の中堅都市向けの路線を検討しているようだ」と報じている。日経によると、20年にも運航を始めるという。
すでに中長距離路線を運航しているLCCは多い。成田空港からはバンコク(スクート)、ジャカルタ(インドネシア・エアアジア)、デンパサール(同)、ケアンズ(豪ジェットスター)、ゴールドコースト(同)などを結んでいるほか、エアアジアXは17年6月に関西-ホノルル線を開設している。
経営破たんで廃止のローマ、ミラノ線、LCCなら復活できる?
「フルサービスキャリア」と呼ばれる既存の航空会社は、主にビジネス需要で収益をあげるのに対して、LCCでは主にレジャー需要を見込む。JALは経営破たん直後の2010年度に、路線規模を国際線で08年度比4割縮小している。この時廃止された成田‐アムステルダム、ローマ、ミラノ、デンパサールといった路線はレジャー客が中心で、搭乗率が高い割に採算性が低いことが指摘されていた。運航コストが低いLCCであれば、こういった路線でも採算がとれる可能性が出てきそうだ。
5月9日のJ-CASTニュース会社ウォッチ編集部の取材に、JAL広報部は日経などの報道について、
「当社が公表したものではない」
としたうえで、
「国際線中長距離の格安航空会社(LCC)設立については検討を行っているが、現時点で決定した事実はない。開示すべき事項を決定した場合には速やかに公表する」
とコメントしている。