【IEEIだより】福島レポート 悪意なき情報の「コピペ」に辟易 そこに「自分の意見」はない(越智小枝)

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オリジナルとリツイートの違い

【リツイートの罪悪感】

   たとえばTwitterやFacebookでは、他の人のツイートをワンクリックで「リツイート」「シェア」する行為が日常的に行われています。他人の意見をそのまま知り合いに転送できるリツイートやシェア。当然、そこに含まれる内容自体は、オリジナルの発信とまったく同じものになります。

   しかし、オリジナルの情報とリツイートされた情報は、決して「同じ情報」ではありません。なぜなら、その2つのあいだには必ず、何をシェアするかを選択した人間が介在しているからです。

   たとえば、

「越智小枝は御用学者」

というツイートを誰かがリツイートすれば、それはリツイートをしたほうが

「越智小枝は御用学者」

だと言っている、ということと同じです。

   それでも、自分でつくった悪口を書き込むことに比べ、誰かの悪口をリツイートするほうが罪悪感ははるかに低いのが現実ではないでしょうか。福島の風評被害拡散の背後にもまた、このような漠然とした無責任感がある、と感じます。

   福島の風評被害が拡散されるとき。私たちはそこにある悪意ではなく、むしろそこに悪意が乏しいことにこそ危機感を覚えるべきなのかもしれません。

【理解というハサミ】

   情報を引用するもう一つの手法が、情報の一部を切り取る「コピペ」です。

たとえば、ある専門家が

「スクリーニングによって発見された甲状腺ガンは予測されていたよりも多かった。ただし、それがスクリーニング効果である可能性もある。」

と発言したとします。誰かがその発言の前半部分だけを切り取って、

「福島の甲状腺ガンが多いと専門家が認めた」

という情報を発信するといった事例は、しばしば目にします。

私もインタビューで、

「福島県産の野菜を避けてジャンクフードを食べる方が健康に悪い」

と言うつもりであるファストフード会社の名前を出してしまったことで、

「〇〇社を福島のスケープゴートにしている」

と書かれてしまったこともあります。

この7年の間に福島から去っていった専門家の方のなかには、このように歪んで伝えられる発信に嫌気がさした、という方も少なからず存在します。

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