テレビの通販番組でおなじみ、ジャパネットたかたの創業者である高田明氏が現在、日本経済新聞の「私の履歴書」欄を執筆しています。
この欄に著名なオーナー経営者が登場する際には大変興味深い話が聞かれるのが常なのですが、今回も同社が2004年に起こした顧客情報漏えい事件から信用回復を図るくだりは、じつに興味深く読ませてもらいました。
ジャパネットたかたの創業者、高田明氏に学ぶ
この情報漏えい事件は、社員による故意の顧客リスト持ち出しだったのですが、高田社長(当時)は経営者としての管理責任を痛感し、当面の通販番組の放映取りやめを決めます。
当然、業績は急下降。番組再開に際して高田社長は、事件の反省から創業の精神に立ち返るべきとの考えから経営理念を社員と改めて共有する必要性を感じ、クレド(企業のもつ行動規範や価値観、経営理念)制定を通じて、改めて徹底を図ったと言います。
経営理念とは、何のためにつくられた会社なのか、お客様に何をすることでそれを実現するのか、それを言葉にして表したものが経営理念です、組織の気の緩みは、惰性の中でこそ起こるもの。高田社長はジャパネットたかたの事件もまた、組織の気の緩み、経営者の気の緩みが社員にスキを与え起きたものであると考えたのでしょう。
下降線をたどった同社の業績は、これを機にV字回復することができ、高田社長の対応は「危機管理のお手本」として高く評価されたのです。
ベンチャー企業などの比較的若い経営者の会社では、経営理念というものが制定されていないケースも間々見受けられるのですが、私はどんな小さな企業であっても、経営理念はその会社の企業活動の社会的意義を社員やお客様に対して表明するものとして、必要不可欠であると考えます。
理念の下に明確なビジョンがあり、そのビジョンの実現を目指し戦略が立てられることこそ、健全な企業経営であるといえるからです。
中期的な目指す姿であるビジョンやそのビジョン実現に向けた戦略は、比較的具体性に富んで社内にも浸透がしやすいというのが一般的です。その一方、肝心要の経営理念に関しては、ややもすると抽象的な存在として受け取られる嫌いがあり、対社内ではお題目的に惰性に任せて唱えられるだけであったり、あるいは壁に貼り出されていても素通りされる存在であったり、というケースも決して少なくないと思われます。