仮想通貨を活用した資金調達の8割近くが失敗
金融庁はこれまで、仮想通貨業者には世界で初めて登録制を導入するなど、フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)の育成という立場をとってきたが、その姿勢は一変し、今後は規制を中心とした行政方針に転換する可能性が高い。
それでも、仮想通貨を活用した資金調達(ICO)などは活況を呈している。国際通貨研究所によると、2018年1~3月には、世界中で毎月50件以上の資金調達案件が実施され、その調達額は総額で50億ドル(約5400億円)に迫っている。これは、2017年の年間約45億ドル(約4800億円)をすでに上回っているのだ。
だが、BITCOIN MARKET JOURNALの2017年12月27日付の記事には、同誌が査定した600以上の仮想通貨を活用した資金調達案件のうち、プロジェクトが完遂したのは約3分の2(394件)で、そのなかで最終損益を報告できたのは約35%であったと掲載されている。 つまり、600件以上の案件で最終損益が報告されたのは約140件だったということ。8割近いプロジェクトは失敗に終わったということだ。
問題は、仮想通貨を活用した資金調達では、株式や債券が発行されるわけではないため、投資家の権利が曖昧な点にある。
株式には議決権というものが備わっているが、仮想通貨を活用した資金調達で発行されるトークン(新たな仮想通貨)には、議決権がない。だから、資金調達を行った企業やプロジェクトの内容に対してチェックができず、非常に高いリスクを内包していることになる。結果的に、仮想通貨を活用した資金調達では、詐欺まがいのプロジェクトが横行し、それに対して、投資家には何ら手立てがないという状況が罷り通ってしまうわけだ。
それゆえ、犯罪への利用や、詐欺まがいの資金調達から投資家を守るためには、仮想通貨のようなデジタルな取引であっても、これまでのアナログな通常の取引と同様の規制を敷いていくことになる。その場合、おそらく仮想通貨の持つ魅力の大部分が失われることになるだろう。
それでも、なお仮想通貨取引は活況を呈しているのだろうか――。(鷲尾香一)