手当廃止は「合理的なシステムへのバージョンアップ」
もう一つ、そういう「実際の業務内容に応じた給料」には大きな可能性がある。以前も述べたとおり、「同一労働同一賃金」の実現には、正社員の年功給を廃止したうえで、業務内容に応じて決まる職務給に一本化する以外に道はない。
そういう意味では、手当の廃止というのは、正社員という身分に紐づけられた生活給から、雇用形態に関わりなく、誰もが果たす役割に応じた処遇を受けられる同一労働同一賃金への最初の一歩ということになる。
単純な正社員の賃下げというわけではなく、基準をそろえる中で貰いすぎの人は下がるし、逆に正社員の中でも上がる人もいるだろう。
ちなみに、政府の作成した同一労働同一賃金ガイドライン案をみると、「雇用形態を理由に手当ての支給に格差をもうけること」に対して、やたらと厳しい姿勢であることがうかがえる。
それを見越して(将来的にもめ事にならないよう)今後も大企業を中心に諸手当の廃止に踏み切る企業が出てくるだろうが、それは必ずしも「下方向へに切り下げ」や「平等に貧しくなる道」などではなく、より新しく合理的なシステムへのバージョンアップくらいにとらえてほしい、というのが筆者のスタンスだ。(城繁幸)