その47 「税抜き価格」の過大表示 「こんなものいらない!?」(岩城元)

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   家電量販店で、5歳くらいの男の子が大きな玩具を抱え、レジに向かっていた。手には千円札を3枚、握りしめている。店員が「3218円です」と言うと、男の子はきょとんとし,さらに店員から「おカネが足りないよ」と言われて、玩具を陳列棚に戻しに行った。

   近くで眺めていた主婦が新聞に一部始終を投書した。それによると、陳列棚の玩具には大きく「2980円(税抜き)」とあり、その下に小さく「3218円(税込み)」との表示があった。男の子は商品を戻した棚の前で、しゃくりあげながら、ぽろぽろと涙を流していた。

  • 税抜き価格だけを赤い字で大きく、あとは小さく「+税」(埼玉県の衣料品店で)
    税抜き価格だけを赤い字で大きく、あとは小さく「+税」(埼玉県の衣料品店で)
  • 税抜き価格だけを赤い字で大きく、あとは小さく「+税」(埼玉県の衣料品店で)

「商人道」が感じられない

   僕も行きつけのスーパーで、レジから言われた金額が思ったよりもかなり高いので「えっ」と声を上げそうになることがある。陳列棚にある商品には、まずは大きな赤い字で「本体価格」、つまり税抜き価格が表示されていて、税込み価格はその下に小さく黒い字で書かれている。

   こんなのは、税抜き価格の「過大表示」とも言えるのではないか。僕だって、税抜きと税込みの違いくらいは分かっている。だけど、税抜きだけが大きな赤い字で書かれていると、つい、そちらのほうに目を奪われてしまうのだ。

   こんなやり方って、いささかズルイのではないだろうか。客にとって重要なのは、実際に払わなければならない税込み価格である。税抜き価格は、言ってみれば、どうでもいいのである。それなのに、まずそれを客に示して、商品を安く見せかけようとする。そんな狙いがあるのではないか。

   スーパーや家電量販店に言わせれば、「消費税は国が決めたことであり、我々とは直接の関係がない。したがって、まず税抜きの本体価格を表示して、どこが悪いのか」ということかもしれない。しかし、それは店の立場であって、客の立場ではない。「商人道」といったものが感じられない。

岩城 元(いわき・はじむ)
岩城 元(いわき・はじむ)
1940年大阪府生まれ。京都大学卒業後、1963年から2000年まで朝日新聞社勤務。主として経済記者。2001年から14年まで中国に滞在。ハルビン理工大学、広西師範大学や、自分でつくった塾で日本語を教える。現在、無職。唯一の肩書は「一般社団法人 健康・長寿国際交流協会 理事」
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