米フェイスブック(FB) のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が、利用者情報の不正利用問題をめぐり、米上院の公聴会で証言しました。
約8700万人の個人情報流出で同社の株価は暴落。FBのビジネスモデルを疑問視する声が強まり、ザッカーバーグ氏の退任論まで囁かれるなか、ザッカーバーグ氏と上院議員との一問一答に世界中が注目しました。
しかし、もう一つ注目されたのがザッカーバーグ氏の「勝負服」。人生最大のピンチを乗り切ることができたのでしょうか?
2日間で10時間の尋問で「鉄板焼き」に!
2018年4月、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ氏が、米上院の公聴会で証言をしました。
Mark Zuckerberg testified at a hearing of US Senate.
(マーク・ザッカーバーグ氏が、米上院の公聴会で証言をした)
※testify:証言する(動詞)
US Senate:米上院
2日間で延べ10時間に及んだ公聴会で、ザッカーバーグ氏はなんと、600もの質問に応え続けたというから驚きです! 何人もの議員に半円状に囲まれて、まるで千本ノックのように次々と質問を浴びせられたザッカーバーグ氏。いかに厳しい状況だったか、その様子はメディアの報道から伝わってきます。
Congress grills Facebook CEO over data misuse.
(議会が、データーの不正利用でフェイスブックのCEOを厳しく尋問した)
※congress:議会
grill:厳しく尋問する
misuse:不正利用
まさかと思うでしょうが、「grill」は肉や魚を焼く「グリル焼き」のグリルです。鉄板の上でジリジリと焼かれるように「厳しい状態」というニュアンスなのでしょう。なんだか一刻も早く逃げ出したくなるような、ツライ状況が想像できます。
ロビー活動に長けたイーロン・マスク氏や、もはや大御所の風格を醸し出すビル・ゲイツ氏といったカリスマ経営者と比べて、学生然とした雰囲気が残るTシャツとGパン姿のザッカ―バーグ氏。果たして「グリル焼き」状態を乗り切ることができたのでしょうか?
勝手ながら、「ちょっと線が細い甥っ子」を見守るような心境で、私は質疑応答を見守りました......
ここで、「今週のニュースな英語」です。
Mark Zuckerberg answered questions directly and confidently.
(マーク・ザッカーバーグ氏は、率直に自信を持って質問に応えた)
公聴会の冒頭こそ少し不安そうな様子を見せたザッカーバーグ氏ですが、その後は次々と繰り出される質問に誠実に、ゆっくりと丁寧に対応していた印象でした。実際、米国メディアがこぞって「及第点」を付けただけではなく、マーケットも好評価。公聴会の様子がテレビなどで放映されると、FB社の株価はぐんぐん上昇していきました。
これまでのところ、ザッカーバーグ氏は難局をうまく切り抜けたという評価だといえるでしょう。
誰もが驚いたザッカーバーグ氏の「勝負服」
この公聴会では、ザッカーバーグ氏、いえFBの用意周到な「戦略」が随所に見受けられました。
まず、ザッカーバーグ氏はあらゆる質問に丁寧に対応するだけではなく、素直に「過ち」を認める発言を何度も繰り返しました。
「that was a big mistake」(大きな過ちだった)
「it was my mistake」(私の間違いだった)
「I'm sorry」(私は反省している)
「one of my greatest regrets」(最も後悔していることの一つだ)
単に謝罪の言葉を述べるだけではなく、大学の学生寮の一室で立ち上げた会社が一気に巨大企業になった「アメリカンドリームを象徴するような社歴」に触れて、「(急成長する中で)失敗を犯さないことはあり得えない」「でも、私が責任を持って対応する」と、居並ぶ議員たちに好印象を与えたと評されています。
謝罪をする一方で、理解を求めて信頼を勝ち取る...... 「お見事!」と言わざるを得ない戦略ではないでしょうか。
とはいえ、誰もが驚いたのが、ザッカーバーグ氏の「勝負服」でした。グレーのTシャツにGパン姿がトレードマークの同氏が、ネイビーのダークスーツにネクタイを締めて公聴会に現れたのです!
おそらく直前に床屋(美容院?)に行ったであろう髪形は、「まるでママに切ってもらった子どもの髪形みたい」と酷評するメディアもありましたが、危機管理の専門家によると「カンペキな装い」とか。ザッカ―バーグ氏の「勝負服」は、次のようなメッセージを発していたという分析です。
・私は、シリコンバレーではなくワシントンの常識に従う
・私は、あなたたちと敵対するつもりはない
・見るからに窮屈そうなスーツは、私にとっての「懺悔服」
・ネクタイの「勝負色」で「FBの経営責任者は私」だとアピールしている
「I'm sorry suit」ネクタイの色は?
では、「I'm sorry suit」(アイムソーリースーツ)と評された戦略スタイルで、辛口の専門家さえもが「見事な選択」と絶賛した「勝負カラー」とは何色だったでしょうか。
答えは「フェイスブックブルー」! フェイスブックのアイコンに使われている水色でした。
なるほど、勝負色にカンパニーカラーの「フェイスブックブルー」で「これからも自分が経営者だ」というメッセージを伝えて退任論を払拭するという狙いだったのでしょう。一見地味なスーツ姿にこれだけの「戦略」が施されていたとは......
私は思わず拍手を贈ってしまいました。
では、今週は、「ニュースな英語」の中から、「副詞」の使い方を学びましょう。
Mark Zuckerberg answered questions directly and confidently.
「directly」(率直に)と「confidently」(自信を持って)という「副詞」が使われています。「副詞」は、「動詞」や「形容詞」を修飾する品詞ですが、「副詞」一つで意味をガラリと変えることができます。
Mark Zuckerberg answered questions directly.
(マーク・ザッカ―バーグ氏は、率直に質問に応えた)
「副詞」を「reluctantly」(渋々と)に変えるだけで、逆のニュアンスを伝えることができます。
Mark Zuckerberg answered questions reluctantly.
(マーク・ザッカ―バーグ氏は、渋々質問に応えた)
同じように、「confidently」を「nervously」(不安そうに)に変えると、ガラリと変わります。
Mark Zuckerberg answered questions nervously.
(マーク・ザッカーバーグ氏は、不安そうに質問に応えた)
前回の比較級と同様、学生時代は「副詞」がキライでした。長ったらしい単語が多くてスペルを覚えるのがめんどうくさいという理由です。でも、シンプルな文章にひと言「副詞」を加えるだけで表現の幅が広がることを発見してからは、積極的に使うようにしています。
みなさんも、どんどん「副詞」を使って、より生き生きとした英語をアウトプットしてみてください。(井津川倫子)