インターネットの検索で、印刷業界紙の日本印刷新聞の最新情報(2018年2月17日付)に、「大日本印刷、ICタグを活用したサプライチェーンにおける情報共有を実証実験」の見出しを見つけた。「ICタグ」はユニクロなどのカジュアル衣料品店でよく見かけるが、それをコンビニエンスストアなどにも応用しようということらしい。
ふと、「ICタグを積極的に活用しよう」といった記事を、少し前に見たことを思い出した。あった! 日本経済新聞(2017年4月18日付)によると、経済産業省が「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」と銘打って、コンビニなどの小売業界で深刻化している人手不足の対策に乗り出したという。
ICタグ需要の拡大に期待も膨らむ
経済産業省の計画では、コンビニの店舗で取り扱う商品にRFID(無線自動識別)機能を持つICタグを貼り付け、商品の個別管理による店舗での消費・賞味期限チェックの効率化や、レジの自動化による業務の省力化を実現。さらにRFIDから取得した情報を、食品や日用品メーカー、卸売り、物流センターといったサプライチェーンを構築して業界で共有することによって、在庫管理などの効率化や食品ロスの削減に効果があると期待されている。
一方、大日本印刷(DNP)は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」の一環として、ICタグを活用したサプライチェーンにおける情報共有の実証実験で、食品や日用品メーカー、卸売り、物流センター、コンビニ(東京都内の3か店)、システムベンダーと共同で「電子タグを用いたサプライチェーンの情報共有システム」の運用を実施している。
さらに、2018年3月27日付の日本経済新聞には、「セブン、検品にICタグ・店内作業時間を6割短縮」の見出し。それによると、セブン‐イレブン・ジャパンがICタグを使い、負担が大きかった店舗で検品作業を大幅に効率化するという。
同日から、おにぎりや弁当などの商品でICタグを取り付けた納品ケースを導入。ケース単位で検品できるようにして、作業時間を約6割削減する。
検品でのICタグの実用化はコンビニア業界では初めてで、人手不足が進むなか、「従業員の時間を有効活用し店舗の競争力を高める」としている。
つまり、経産省の「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」が実現に向けて、着々と進んでいるということのようなのだ。
17年9月期に赤字、人気の離散している今がチャンスかも
凸版印刷とともに印刷業界を二分する大手、大日本印刷の事業構成(2017年3月期)は、情報コミュニケーション(大手書店、雑誌との共同での書籍、雑誌の新たな流通業態模索・電子書籍事業)が57%を占めるほか、生活・産業(企業業務代行のアウトソーシングやICカード)が27%、エレクトロニクス(液晶カラーフィルター・半導体用フォトマスク・ICタグ)が12%、清涼飲料4%となっている。今後は、エレクトロニクス分野や生活・産業分野の成長を見込んでいる。
有機EL需要の拡大に、ひと役買いそうな「メタルマスク」(クリームハンダを基盤に印刷する時に使用する印刷版のこと)の技術や、2018年4月には大日本印刷が開発した端末を設置して西日本シティ銀行と「顔認証」技術を使ってキャッシュカードを即時発行する実証実験を開始した。
培ってきた印刷技術が最新のテクノロジーと相まって、ICタグ需要の拡大のみならず、まだまだ事業領域を広げていける、そんな期待がもてそうだ。
そんなことで、改めて大日本印刷の決算状況を見直したところ、2017年11月10日付の日本経済新聞に、2017年4~9月期決算の記事。連結最終損益は、214億円の赤字(前年同期は151億円の黒字)に転落。赤字の原因は、「壁紙の不具合対応」による535億円の特別損失。販売した壁紙製品が剥がれる不具合があり、貼り替えなどの補修関係費用を積み増した。
ただ、前期比3%増を見込む18年3月期の純利益予想は、変更しなかった。「生産拠点の統廃合や遊休地の売却などを進め、損失を埋め合わせる方針」としている。
加えて、18年3月12日付の開示情報では「特別利益(投資有価証券売却益)の計上に関するお知らせ」として、291億3500万円の投資有価証券売却益を発表。18年3月期の純利益は想定内に収まりそうだ。
17年(1月~12月)の株価推移をみると、安値が17年1月4日の2360円、高値は11月9日の2854円だった。現在の株価2244円(18年4月13日現在)を考えると、2200円近辺、そろそろ買いのタイミングではないかと考えている。
2018年4月11日現在 保有ゼロ
年初来高値 2018/01/09 2621円00銭
年初来安値 2018/03/26 2128円00銭
直近 終値 2018/04/13 2244円00銭