「逆効果」? T君は突然、会社を無断欠勤した
ピグマリオン効果は、スポーツだけでなく、もちろんビジネスシーンの組織活動においても力を発揮します。
部下の業務を経営者や上司が、ただ単に黙って見ているのではなく、期待感を直接言葉にして伝えると、確かにその期待に応える確率は格段に高くなる。そんな実例は数多く現場で見てきました。
その一方で、ピグマリオン効果が出ずに、むしろ逆効果だったり、さらには好ましからざる問題が生じたりするケースも、希にありました。
作業用ロボットを主に取り扱う販売代理店B社のY社長は、地元商工会議所の社会保険労務士を招いた勉強会でピグマリオン効果の話を聞き、なかなか実績があがらない自社の営業スタッフたちを相手に、さっそく実践してみることにしました。
3人の営業スタッフに期待感を伝えることで、少しずつではありながら確実に実績が上がってくることが実感できましたが、最も若手のT君だけはどうにも成果が上がらない日々が続きます。
それが、Y社長が根気強く期待感を伝え続けていくうちに、ようやくT君の実績が上がりはじめました。「さすが、ピグマリオン効果!」と社長は大喜び。さらなる期待感をT君に伝えると、T君は次々と実績を積み上げていきました。
ところがある日、T君は突然会社を無断欠勤すると、その後二度と会社に来ることはありませんでした。彼が辞めた後にわかったことは、彼の受注実績はすべて、彼が会社に申告していた見積金額とは比べものにならないほど安価な、赤字受注だったことでした。会社は思わぬ損失を被ることになってしまい、社長は頭を抱えてしまいました。