帝国データバンクは2018年4月12日、企業の「2018年度業績見通し調査」を発表したが、アベノミクスに対する評価が前年度(2017年度)より下がり、しかも恩恵をこうむっている企業と、効果が行き届かない企業との間で格差が広がっていることが浮き彫りになった。 特に、中小企業の間で辛口の評価が多くなり、背景には深刻な人手不足があることがわかった。
「外需と外国人観光客に依存」「古いケインズ理論はダメ」
調査は、2018年3月に全国2万3137社を対象に行なわれ、業績や景気動向の見通しなどを尋ねた。その中で、安倍政権の経済政策(アベノミクス)の成果について、100点満点で評価し、意見を聞いたところ、全体では62.4点で昨年(2017年)より0.7ポイント下がった。これは過去4年間で下から2番目。特に今回目立ったのは、大企業と中小企業・小規模企業との間で、評価の格差が広がったことだ。
大企業が64.7点と前年より0.5ポイント上がったのに対し、中小企業では61.9点と、逆に前年より0.9ポイント下がった。特に、従業員が5~20人以下の小規模企業ではさらに60.9点と1.2ポイントも下がっている。
大企業各社からは、「製造業の活況、国内雇用政策の安定、地方対策がうまく寄与している」(99点、石灰製造、岐阜県)や、「アベノミクスにより確実に景気がよくなり、設備投資が旺盛に推移している」(95点、精密機械器具卸売、鳥取県)、「若年者の就職が良くなっていることは、今後の社会構造を盤石にする可能性がある」(90点、貨物自動車運送、愛知県)などと絶賛する意見が寄せられた。
しかし、中小企業・小規模企業からは、アベノミクスが実感できないという厳しい指摘が相次いだ。こんな意見だ。「目先の金融政策・成長戦略・政策支援ばかりで、先行きが暗い」(0点・土木工事・群馬県)。 「内需がまったく回復していない。外需頼みであることや、外国人観光客への依存度が高すぎる」(10点・金属プレス製品製造・長野県)。 「一部(大企業・首都圏・資産家)にしか好影響がなく、格差は広がってしまっている」(30点・フィットネスクラブ・長野県)。 「国の借金が増えるだけ。古いケインズ理論では解決できない」(40点・建設機械・宮城県) 「働き方改革や賃上げを中小企業にも求めるのは無理がある」(45点・強化プラスチック製品製造・福井県)
深刻な人手不足が中小企業に打撃
また、「90点以上」(8.1%)と高く評価する企業が過去4年間で最高になった一方、「50~59点」「60~69点」「70~79点」「80~89点」では、いずれも前年を下回り、アベノミクス評価での中間層が薄くなる傾向がみられた。そして、「10点未満」から「40~49点」までの低い評価を下す層が、軒並み前年より増えた。これは、アベノミクスの恩恵をこうむる企業と、効果が得られない企業との間で、はっきり格差が広がったことを意味するという。
この理由について、帝国データバンクでは
「2018年度業績に対する見通しは、全体として改善すると見込む企業が多いが、中小企業以下ではまだ緩やかな改善にとどまっている。一方、中小企業以下を中心に人手不足が一段と深刻になり、業績に悪影響を与えているとする企業が増え、過去最高の39%に達した。政府は、人手不足対策を最重要課題に取り組むべきだ」
と分析している。