「ヤバイ」は伝わらない!? 大谷報道から学ぶ「世界標準の伝え方」(井津川倫子)

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   大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手が、すごいことになっています! 開幕後たった10試合のうちに3試合連続本塁打を放ち、投手としては2勝目をあげる異次元の活躍ぶり。米国はもちろん、野球があまりメジャーではないフランスや英国のメディアまでもがこぞって報道したほどです。

   そこで、海外のニュースを見ていたら、ある共通点に気がつきました。「すごい」事象を伝える時に「ヤバイ」で通じるのは日本だけ。「すごさ」を伝えるには、万国共通の「伝え方」があるようです。

  • 大リーグでも「二刀流」大谷選手は大活躍!(画像はイメージ)
    大リーグでも「二刀流」大谷選手は大活躍!(画像はイメージ)
  • 大リーグでも「二刀流」大谷選手は大活躍!(画像はイメージ)

「二刀流」は英語で何という?

   大谷翔平選手をめぐるニュースから、「こんなにすごい」ということを相手に伝えるコツを学びましょう。まずは、「異次元のレベル」を伝える工夫から。ちょっとオーバーな表現で、規格外の驚きを表しています。

   Shohei Ohtani is very clearly not from this planet.
(大谷翔平は、明らかにこの惑星の人ではない)

   日本のメディアでも紹介されたフレーズですが、「こんな偉業を成し遂げるなんて同じ人間とは思えない!(他の惑星から来た宇宙人だろう)」といったニュアンスが伝わります。まるでどこかの飲料メーカーのテレビCMみたいですね。

   オーソドックスなところでは、「Japanese two-way superstar」(日本人の二刀流スーバースター)という表現が目立ちました。「二刀流」は「two‐way star」とか「two‐way player」と覚えておくとよさそうです。

   ちょっと気が早い気もしますが、「歴史をつくった」と報じたメディアもありました。たった数日間で100年以上の歴史を誇る大リーグの「新たな歴史」になるとは...... 大谷選手の歴史的な活躍ぶりが伝わってきます。

   The two-way star is already making significant MLB history.
(二刀流のスターは、すでにMLBの重要な歴史をつくっている)

※make history :歴史に残る、偉業を成し遂げる
※significant :重要な、意義深い
※MLB :Major League Baseball(メジャーボールベースボール)

   実際、「once-a‐century player」(100年に一人の逸材)と評価しているメディアもありました。「century」(世紀)に「one」(一人)とあっては、「まさに歴史的な瞬間をリアルタイムで観ている!」いうありがたみを感じます。

ベーブ・ルースよりもすごい!

   とはいえ、どのメディアにも共通していたのは「比較」を用いた表現です。「欧米人は個人主義なので人と比べないはずでは?」と首をかしげたくなるほど「比較」のオンパレード。何かと比べることで事の大きさや話題性、ニュースの価値を「客観的に」伝えるという方法は万国共通のようです。

   では、ここで、「今週のニュースな英語」です。

   今週はいくつかの「比べて伝える」方法を取り上げます。まずは、誰もが知っている人(やモノ、事象)と比べて「~より大きい」「~よりすごい」と伝える表現です。簡単に「すごさ」がイメージできるので、ムダな説明がいらないというメリットがあります。

    Shohei Ohtani is doing things even Babe Ruth did not.
(大谷翔平は、ベーブ・ルースでさえできなかったことをやっている)

   野球の神様といわれる「ベーブ・ルースよりもすごい」といわれたら、誰もが「そんなにすごいのか!」と納得するでしょう。

   野球に詳しくない人でもベーブ・ルースの名前は聞いたことがあるはずです。世界的に有名な人(やモノ、事象)であれば、世界中の人にひとことで伝わりますね。ビジネスでもぜひ使いたい手法です。

   「比べて伝える」ときに、比較級がよく使われます。中学校の授業で習った「more~than」の文法を思い出してください。

   Shohei Ohtani has hit more home runs than Kris Bryant and he's struck out more batters than Max Scherzer.
(大谷翔平は、クリストファー・ブライアントよりも多くのホームランを打ち、マックス・シャーザーより多くの三振を取った)

※struck out:strike out(三振をとる)の過去形

「すごい」をアピールしたい場合は、こんなふうに!

   続いて、3つ以上の人(モノなど)を比べる時に使う表現です。

   まずは、「the first」(最初の)を使った表現です。とにかく「一番」や「初めて」はニュースになります。「初めての黒人米大統領」とか「最初に100メートルを9秒台で走った人」などです。大谷選手も「初めて」でニュースになりました。

   Ohtani became the first player in 99 years to win two games and hit three home runs within the first 10 games.
(大谷は、最初の10ゲームで2勝を上げて3本のホームランを打った、99年間で初めての選手になった)

   「一番」ではないけれども「すごい」場合は、「one of the +最上級」(最も~な一つ)という言い方がよく使われます。「一番かどうかわからないけど間違いなくトップクラス」という時に使います。

   Shohei Ohtani is one of Japan's most promising young athletes.
(大谷翔平は、日本で最も有望な若いアスリートの一人だ)

    この「one of the+最上級」は、ビジネスの場面でもとても応用が利く表現です。

    This company is one of the oldest companies in Japan.
(この会社は、日本で最も古い会社の一つです)

「one of the biggest companies」(最も大きな会社の一つ)

「one of the most innovative companies」(最も革新的な会社の一つ)

   などなど、いくつも例が浮かんできます。

   プレゼンテーションや会議での発表、上司への報告や顧客へのアピール...... 数ある提案や商品の中から選んでもらうために、少しでも「すごさ」を伝えたい。ビジネスはそんな場面の積み重ねです。

   「比べて伝える」スキルを使いこなせば、ビジネスにおいて「伝える力」がグンと向上しそうです。私自身、学生時代は苦手だった「比較級」ですが、こんなに使える表現だったのかと「目からウロコ」の発見でした。(井津川倫子)

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井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
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