この(2018年)2月と3月にあった韓国・平昌での冬季オリンピックとパラリンピック以来、「北朝鮮」という国の名前が以前にも増して、新聞やテレビなどをにぎわすようになった。
4月に予定されている韓国と北朝鮮の南北首脳会談、5月の米国と北朝鮮の米朝首脳会談、そして先般、突然に行われた中国と北朝鮮の中朝首脳会談といったニュースのせいである。今はまったく予定されていないが、日本と北朝鮮の日朝首脳会談という言葉もたまには出てくる。
かつては、最初に「朝鮮民主主義人民共和国」と呼んでいた
ところで、「韓国」や「米国」「中国」そして「日本」はちゃんとした国名だが、「北朝鮮」はそうではない。「朝鮮半島の北部地域」といった意味に過ぎない。「朝鮮民主主義人民共和国」が北朝鮮の正しい国名で、「北朝鮮」はいわば通称である。中国では北朝鮮を「朝鮮」と呼んでいる。
日本でもかつては、新聞やテレビなどで北朝鮮のことを伝える際は、まず最初に「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)」と書いたり、「北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国」と言ったりし、あとは北朝鮮とだけ使っていた。
ところが、21世紀に入ってからは、朝鮮民主主義人民共和国とはいっさい言わず、北朝鮮とだけ言うようになってきた。拉致問題を巡って、日本国民の北朝鮮に対する感情が悪くなっていることが影響したのかもしれない。また、かの地を蔑視する感情も働いているだろう。
そうは言っても、北朝鮮はわが国と国交はないけれど、国連の加盟国である。そんな国が他国のメディアから国の名前を呼んでもらえず、ただ地域の名称だけで呼ばれるとしたら、どんな気持ちがするだろうか。
朝鮮半島にあるふたつの国の一方が「韓国」と正しく呼ばれているのに、他方が「北朝鮮」では不公平だし、失礼ではないか。想像だけど、日本から拉致問題の解決を迫られても、真面目に取り組む気にはならないのではないだろうか。