ふるさとの親が心配「介護Uターン」で「働き方改革」を支援 パソナ×地方自治体

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   「母の介護のため、実家に帰らないと......」。そんな事情を抱える働き盛りのビジネスパーソンは少なくない。

   両親の介護によって、自分自身の働き方を見直す必要に迫られている人への支援に、人材ビジネスを手がけるパソナグループが、地方自治体と連携して乗り出した。

  • 「介護の鉄則は早期発見、早期対策」と語る、パソナライフケアの継枝綾子さん(北九州市が開いた「介護Uターン」セミナーで)
    「介護の鉄則は早期発見、早期対策」と語る、パソナライフケアの継枝綾子さん(北九州市が開いた「介護Uターン」セミナーで)
  • 「介護の鉄則は早期発見、早期対策」と語る、パソナライフケアの継枝綾子さん(北九州市が開いた「介護Uターン」セミナーで)

働き盛り世代のUターン事情「両親の介護」多く

   広告大手の電通が、現在全国64都市に在住し、実際にUターン移住(出身地から離れて首都圏で生活をした後に、自らの意思で自身や配偶者の出身地、あるいはその周辺で暮らしている人)を経験した20~60代の男女1714人を対象に実施した「全国Uターン移住実態調査」によると、Uターン移住のきっかけとして、「両親の近くに住みたくて」などの親のことを考えた人は24.5%と、首都圏での生活にストレスなどを感じてUターンした人(28.1%)に次いで2番目に多かった。

   なかでも、働き盛り世代や熟年層は両親の介護などの事情を理由にあげるケースが多く、若年層は東京での生活へのストレスが多いこともわかった。

   一方、調査ではUターン移住者の5割以上が、いずれ出身地に戻るつもりで上京していることや、約6割の人が思い立ってから半年以内にUターンに踏み切っていることもわかった。

   こうした事情を背景に、パソナグループはふるさとに戻る、Uターン希望者の帰郷後の仕事や生活、お金の不安を取り除き、都市部のUターン希望者(求職者)の移住と地域企業や地方自治体などの求人情報(就業)のマッチングを促進する、「UIJターン」に力を入れはじめた。

   ちなみに、「Jターン」は聞きなれないが、都市部の人が出身地(Uターン)まで戻らず、その周辺地域に移住するケースをいう。

   パソナと地方自治体が協力して、Uターン希望者の受け入れ態勢を整える。すでに、札幌市や宮城県、秋田県湯沢市、福島県、新潟県、富山県、石川県、岐阜県山県市、岡山県和気町、福岡県北九州市、熊本県と連携。愛知県や大阪府とも協力関係を結んでいる。

   地方自治体としても、地域産業の活性化や地元企業の生産性アップは大きな課題。地元企業が人手不足を解消して元気を取り戻せば、人口減少にも歯止めがかかり、地域全体が活気づく。そんなシナリオを描いている。

   大学を卒業して就職。年齢を重ねるにつれて、「田舎暮らし」を考える人はいなくはないが、地域産業が衰退し、食べていくための「職」がなくては生きてはいけない。地方自治体も、手をこまねいているわけにはいかなくなった。

Uターン就職、石川県や福島県では100人超す

   パソナによると、たとえば石川県のケースでは、石川県内と東京都内に「いしかわUIターン相談センター」を設置。移住希望者の就職と暮らしの相談に応じていくため、東京に3人、石川県に4人の「支援員」を配置して対応している。2016年度に県内に戻り、就職を決めた人は117人にのぼる。

   また福島県では、県内で中小企業の求人開拓を行う傍ら、東京都内では面談や電話・メールなどで移住や就職の相談に応じる活動を展開。16年度は、157人のUターン就職が決まるなど、成果をあげている。

自身もUターンという北九州市地域医療課の青木穂高課長
自身もUターンという北九州市地域医療課の青木穂高課長

   そうしたなか、2018年3月10日、東京・有楽町の北九州市東京事務所で「北九州市 Uターン×介護セミナー」が開かれた。主催は北九州市。50代男性を中心に19人が集まった。

   セミナーは、パソナライフケアの主任ケアマネジャーの継枝綾子さんが、寄り添って介護することのメリットや「介護Uターン」について解説。その後、自身もUターンという北九州市保健福祉局地域医療課の青木穂高課長が市の住みやすさを説明。U・Iターン応援オフィスの安田亜紀子さんが介護Uターンの事例を紹介した。

介護Uターンの「コツ」教えます

   そもそも、「仕事と介護の両立」はハードルが高いと思われがち。まして介護Uターンともなれば、なおさらだ。しかし、継枝さんは「介護の鉄則は、早期発見、早期対策」と指摘。それを考えると、やはり近くで暮らすのが介護する側、される側の双方にとって安心で、かつ先手先手で対応できる。「なにより、いざという時に『もっと早く気づいてあげればよかった』という、後悔を回避できます」と説く。

   継枝さんは、「実際に介護Uターンした方が感じていることとして、それまで故郷を離れて暮らしていたことで、両親とすごせなかった『空白の時間』を埋められることが大きいといいます」と話す。

「介護休業は前職と転職先の2度、取得できます」(パソナライフケアの継枝綾子さん)
「介護休業は前職と転職先の2度、取得できます」(パソナライフケアの継枝綾子さん)

   一方、最近は「働き方改革」の推進で、企業も介護休業(最大93日まで取得。給与の67%まで介護休業給付金が支給される)を整備。ただ、それを取得して介護に専念できている人はそれほど多くない。

   継枝さんは、「介護は、まず周囲の理解が大事。妻(あるいは夫)や家族、職場にも理解してもらうことです。理解がなければ、休みもとれません。休みがとれれば、地元に戻る時間ができますし、就職や生活のことでいろいろと相談できます」と強調。しかも、この介護休業は「転職時には、それまで勤めていた企業と地元企業の2度、取得できます。これを上手に使って、じっくりコミュニケーションをとっていくことが大切です」と、U ターン転職の「コツ」を伝授した。

   介護休業を上手に取得することで、介護保険を活用するうえで欠かせない、ケアマネジャーや介護サービス事業者とのコミュニケーションも迅速かつ円滑になるという。

   介護Uターンの事例を紹介した北九州市U・Iターン応援オフィスの安田亜紀子さんによると、2017年に北九州市にU・Iターン事業で就職を決めたのは222人。登録から、新たな仕事につくまでは、平均317日だった。

   北九州市は今後も、東京事務所などの首都圏でUIターンや移住のためのイベントを実施する予定。小倉北区と東京事務所内に常設している「北九州市U・Iターン応援オフィス」でも、随時相談を受け付けている。

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