豊かなバストとスリムなスタイルは多くの女性の夢なのだろう。それを同時にかなえるとうたう「プエラリア・ミリフィカ」という植物の成分を含むサプリメント(栄養補助食品)が大人気になっている。
ところが、それによる健康被害が相次いでいるため、国民生活センターは2018年3月27日、「摂取を控えるよう」警告を発した。
タイでの研究報告、「豊胸」「ダイエット」などの効果は認められず
「プエラリア・ミリフィカ」は、タイで栽培されるマメ科のクズ(葛)の一種で、根の部分に女性ホルモン作用をもつ植物性エストロゲンを多く含んでいる。現地では更年期障害の民間薬として長年使われており、日本でも10年ほど前は「更年期障害に効く」と、中高年女性のあいだでブームになった。
それが数年前からは「バストアップする」「ウエストがスリムに」「プルルンお肌に」などと、女子力アップをうたう通販サイトが増え、若い女性に広がった。
ただ、タイでも「豊胸」や「ダイエット」「美肌」「若返り」などの効果を確かめた研究報告はなく、また大豆などに含まれるイソフラボン類も女性ホルモンと同じ作用があるが、プエラリア・ミリフィカに含まれる成分の作用は、なんとイソフラボン類より1000~1万倍強いという報告がある。
さらに、厚生労働省のインターネット調査によると、使用者は女性ばかりと思いきや、意外にも男性が29%もいることがわかった。強い女性ホルモン作用に目をつけ、「育毛効果」をうたう通販サイトがあるからだ。
国民生活センターによると、「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品による健康被害の報告は、2012年以降209件寄せられており、うち200件以上が2015年以降に集中している。
おう吐、下痢、腹痛などの消化器障害が一番多く、次いで発疹、じんましん、アレルギーなどの皮膚障害、さらに大量の不正出血、生理が止まるなどの月経に関する健康被害の順だ。被害を受けた全員が通販サイトからサプリを購入していた。
国民生活センターでは、大手通販サイトに「バストアップ」「豊胸」「サプリ」などのキーワードを打ち込み、プエラリア・ミリフィカが原材料の配合量で上位3位に入っているサプリ、合計12銘柄を選び、商品テストを実施。そして、各銘柄のエストロゲン活性を起こす成分量などを調べた結果、銘柄によって成分量がバラバラで、エストロゲン活性がまったくないものから、糖尿病患者やホルモン療法を受けている人、妊娠・授乳中の女性などに悪影響を与える強さのものまでさまざま。さらに摂取するうえで、こうした注意事項を商品パッケージに表示していない銘柄もいくつかあった。
健康増進法や景品表示法に抵触ギリギリ? のキャッチコピー
「豊潤なバストとダイエットは両立できます。~あなたが欠かさず「飲む」だけ バストだけじゃない ボンっとしてキュっとした体を手に入れませんか?」
「バストにハリ!! おなかもスッキリ!!」
「驚く実感、ハイスピードの高級プエラリア。あなたは、ただ飲んで確かめるだけです!!」
「豊潤なバストとダイエットを実感できるのに1か月もかかりません」
効果が明らかではないのに、パッケージなどにこのようにうたう銘柄が半数近くあり、医薬品医療機器等法や健康増進法、景品表示法に抵触するおそれがある表現も満載。同センターでは2017年に、販売事業者に警告したが、多くの通販サイトでは「BからEに!ブラ買い換えなきゃ(汗)」「ふっくらマシュマロ愛されシルエット」と、野放し状態になっているという。
それもそのはず。プエラリア・ミリフィカに含まれている各成分は、危険薬物ではないため、日本の法律では販売禁止にできないのだ。
厚労省も2017年8~9月に専門家による調査会を開き、プエラリア・ミリフィカなどを原材料に扱う食品事業者に原材料の安全管理と消費者への注意喚起を徹底させるよう指導したものの、その後も健康被害の報告が相次いでいるため、今回の国民生活センターの警告となった。
体調不良が現れるのは、摂取してから数か月後
国民生活センターでは、「今回調べたプエラリア・ミリフィカを含む健康食品には、強い女性ホルモン作用を持つ成分が多く含まれているものがありました。これを摂ると、ホルモンバランスが崩れて思わぬ健康被害が発生するおそれがあります。体調に異常を感じたら、すぐに医療機関を受診してほしい」と呼びかけている。
また、プエラリア・ミリフィカのサプリで月経不順などの体調不良が現れるのは、摂取後数か月経ってからのケースが多く、サプリが原因かどうかもわかりにくい。そのため、そのまま飲み続ける人が多く、定期購入の契約の際に返品が利く期間を過ぎてしまい、多額の購入費を返してもらえずに泣き寝入りするトラブルも多く報告されている。