「パートが、仕事が終わらないのに帰る」「仕方ない」「無責任」どっち? 専門家に聞いた!

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   「パートの人が、仕事が完了していないのに帰ってしまい、困っている」と嘆く投稿が、インターネットで炎上ぎみの騒ぎになっている。

   「時間で働くパートだから仕方ない」「安い賃金なのに正社員並みの残業を要求するほうがおかしい」という反発だ。

   一方、「パートとはいえ、責任感を持って働くべきだ」と、投稿に賛同する意見も。J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、労務問題に詳しい専門弁護士を取材。法的に賛否両論のどちらが正しいのか、また、パートに残業してもらう場合、どういう点に注意すればよいかをアドバイスしてもらった。

  • パートでも残業がある?(写真はイメージです)
    パートでも残業がある?(写真はイメージです)
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「パートは定時に帰れるから、安い賃金で働いている」

   話題のきっかけになったのは、女性向けサイト「発言小町」(2018年3月3日付)に載った「仕事が完了していないのに帰ってしまうパートさん」と題する投稿。

「新しいパートさんが入ってきました。勤務時間は10時から15時まで。月末月初めや繁忙期には残業をしてもらう契約ですが、用事があるからと1~2時間ほど残業し仕事が完了しないうちに帰ってしまうことがあるので困っています」

という。パートがやり残りの作業は投稿者が片づけているといい、同僚に愚痴ると「パートだから仕方ないよ」と言われた。投稿者は、そのパートの仕事への意識が「低い」と感じていて、その半面、「不満に思う私が間違っているのでは」とも思う。

   この投稿に対して、「パートは時間で働くのだから仕方ない。残業してもらうだけでも感謝すべきだ」という反発が大半だった。

「パートは正社員よりずっと雇用が不安定で、給与が少なく、福利厚生を享受できない。なぜ好き好んで、そんな立場に甘んじているのか? 定時で帰れるからです。そのパートさん、残業に2時間も応じている。十分に協力的です。希望どおりに残業させたいなら、最初から正社員を雇ってください」
「契約が15時までのパートならば、忙しかろうが何だろうが帰るのは仕方ない。それを破ったら労働基準法違反ですよ。パートには与える仕事量と内容が、その人物の能力、時間制限を勘案して十分に勤務時間中に終えられるものでなければならないと思います」

   つまり、もともと安い賃金のパートに、正社員と同じような働き方を要求したり、1~2時間の残業でも終わらない仕事を頼んだりするほうが間違っているというわけだ。

「時間内に仕事ができない無能力なパートはクビにしなさい」

   その一方で、ごく一部だが、次のように投稿者に賛成する意見があった。

「以前はパートといえば腰掛け程度で簡単な仕事をする人というイメージでしたが、今は即戦力です。だから、同僚の『仕方がない』という発言は当てはまらない」
「私は海外生活が長いですが、日本人の仕事への責任感は本当に素晴らしいと思っています。海外ではスーパーのレジ打ちの人は時間がきたら、どんなにお客さんが並んでいても、『はいっ、ここまで』とお客さんを置いて帰ってしまいます。日本人はそんなこと絶対しませんよね。とりあえず、いま並んでいるお客さんの対応をしてから帰りますよね。投稿者の言っていることはそういうことではないですか」
「パートに対する意識の低さにびっくりしました。皆さん、20年くらい前の感覚ですね。まず時間内に仕事が完成できる人を雇う。能力がない人を雇ってはダメ。時間内に終わらせることを前提に働いてもらい、できなければ怠慢と見なし、残業は仕方がないです。私は時間内に終わらせることができない、不出来なパートを辞めさせてきました」

   このように賛否両論があるが、法律上はどちらが正しく、また、パート労働者の残業にはどう対応したらよいのか。J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、労務管理問題に詳しい石崎冬貴弁護士(横浜パートナー法律事務所)に聞いた。

パートも使用者も「残業」に対する認識を契約時から共有しよう

――投稿者への批判が多いですが、労働基準法上は投稿者の言い分は間違っているのでしょうか、正しいのでしょうか。

石崎冬貴さん「労働基準法上、当然ですが、所定労働時間として10時から15時と定められていれば、会社はその時間を超えて働かせることはできません。ただ、そのパートさんに適用される就業規則なり、雇用契約書なりに、所定労働時間を超える労働(残業)があることを明示していれば、会社は、残業を命じることができます。もちろん、法定労働時間内(原則週40時間、日8時間)である必要があります。
今回の件でも、月末月初めなどの繁忙期には、残業を命じることがある、と規定されていたようですから、法律上、会社は残業を命じることができます。これが法律上の回答です」

――そうなると、投稿者のほうが正しいように思えますが、「パートだから仕方がない」という意見が圧倒的です。

石崎さん「一般的には、『パートだから仕方ない』という考え方が支配的だと思います。そもそも、パートさんはいろいろな事情があって正社員ではなくパートを選択していますし、その代わりに、現実問題として賃金や昇進、福利厚生などで正社員とはかなり差があります。
実際に、厚生労働省の指針『事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針』でも、パートの残業には個々のパートの事情を十分考慮し、できる限り、時間外労働や休日残業をさせないように努力する、こととされています。ですので、この意見が支配的なのは当然だと思います」

――では、投稿者はパートに対して、どう対応すればよいのでしょうか。

石崎さん「投稿者の立場がわかりませんが、基本的には本人に対して、契約書を示すなどしたうえ、残業の必要性を説明して理解を求めるべきでしょう。ただ、あまりいえば退職してしまう可能性があります。私であれば、残業について、より具体的に認識の差を埋めていくようにアドバイスします。つまり、本人には、繁忙期にはフルタイムレベルで残業があることをしっかりと明示し、その時期にはできる限りあけておいてほしいと伝えます。
他方で、会社に対してはパートさんなので急な予定もありえるし、自分としても強くいえない旨を伝え、別の融通が利くスタッフや、人員に余裕を持たせるなど、会社に対しても、そのパートさんがいない前提でシフトを組んでもらうというわけです」

――ごく一部ですが、投稿者に賛同する意見もあります。こうした意見に対してはどう思われますか。

石崎さん「この投稿に肯定的な意見も、個人的には理解できます。ただ、これらの意見を注意してみると、どの意見も『繁忙期に残業があることは契約上定められているから、このパートさんは会社の指示に従うべき』とは述べていません。責任感がない、とか、協調性がないとか、観念的な問題としてとらえているのです。
このパートさんから見れば、正社員であることのメリットを放棄する代わりに、パートであることのメリットを最大限享受する、という選択肢を取っているわけですから、双方でかみ合うわけがありません。『繁忙期には正社員レベルの残業がある』という点について、双方で認識を共通していなかったことが、この問題の核心です。
投稿の中でも示唆していますが、採用の段階で残業が可能かどうか、どのような場合にどの程度の残業がありうるか、について、しっかりと事前に話し合うべきといえるでしょう。もちろん。これからでも遅くありません」
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