「パートが、仕事が終わらないのに帰る」「仕方ない」「無責任」どっち? 専門家に聞いた!

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パートも使用者も「残業」に対する認識を契約時から共有しよう

――投稿者への批判が多いですが、労働基準法上は投稿者の言い分は間違っているのでしょうか、正しいのでしょうか。

石崎冬貴さん「労働基準法上、当然ですが、所定労働時間として10時から15時と定められていれば、会社はその時間を超えて働かせることはできません。ただ、そのパートさんに適用される就業規則なり、雇用契約書なりに、所定労働時間を超える労働(残業)があることを明示していれば、会社は、残業を命じることができます。もちろん、法定労働時間内(原則週40時間、日8時間)である必要があります。
今回の件でも、月末月初めなどの繁忙期には、残業を命じることがある、と規定されていたようですから、法律上、会社は残業を命じることができます。これが法律上の回答です」

――そうなると、投稿者のほうが正しいように思えますが、「パートだから仕方がない」という意見が圧倒的です。

石崎さん「一般的には、『パートだから仕方ない』という考え方が支配的だと思います。そもそも、パートさんはいろいろな事情があって正社員ではなくパートを選択していますし、その代わりに、現実問題として賃金や昇進、福利厚生などで正社員とはかなり差があります。
実際に、厚生労働省の指針『事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針』でも、パートの残業には個々のパートの事情を十分考慮し、できる限り、時間外労働や休日残業をさせないように努力する、こととされています。ですので、この意見が支配的なのは当然だと思います」

――では、投稿者はパートに対して、どう対応すればよいのでしょうか。

石崎さん「投稿者の立場がわかりませんが、基本的には本人に対して、契約書を示すなどしたうえ、残業の必要性を説明して理解を求めるべきでしょう。ただ、あまりいえば退職してしまう可能性があります。私であれば、残業について、より具体的に認識の差を埋めていくようにアドバイスします。つまり、本人には、繁忙期にはフルタイムレベルで残業があることをしっかりと明示し、その時期にはできる限りあけておいてほしいと伝えます。
他方で、会社に対してはパートさんなので急な予定もありえるし、自分としても強くいえない旨を伝え、別の融通が利くスタッフや、人員に余裕を持たせるなど、会社に対しても、そのパートさんがいない前提でシフトを組んでもらうというわけです」

――ごく一部ですが、投稿者に賛同する意見もあります。こうした意見に対してはどう思われますか。

石崎さん「この投稿に肯定的な意見も、個人的には理解できます。ただ、これらの意見を注意してみると、どの意見も『繁忙期に残業があることは契約上定められているから、このパートさんは会社の指示に従うべき』とは述べていません。責任感がない、とか、協調性がないとか、観念的な問題としてとらえているのです。
このパートさんから見れば、正社員であることのメリットを放棄する代わりに、パートであることのメリットを最大限享受する、という選択肢を取っているわけですから、双方でかみ合うわけがありません。『繁忙期には正社員レベルの残業がある』という点について、双方で認識を共通していなかったことが、この問題の核心です。
投稿の中でも示唆していますが、採用の段階で残業が可能かどうか、どのような場合にどの程度の残業がありうるか、について、しっかりと事前に話し合うべきといえるでしょう。もちろん。これからでも遅くありません」
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