意味が推測できる漢字は楽
小説家で劇作家、放送作家であった故・井上ひさしさんは生前、
「新聞や雑誌の記事で『交ぜ書き』を見ると、なんとなくその日の御飯がまずくなる」
「とにかく交ぜ書きには力が抜けて閉口する」
と書いていた。
かつて、よく売れた「日本人の知らない日本語」(蛇蔵&海野凪子著)という漫画本があった。その海外編に、オランダで日本語を学んでいる学生が交ぜ書きについて、
「あれ、やめてほしいです」
「漢字が沢山あるほうが楽ですよ。意味が推測できますから」
と叫ぶ場面があった。
ただ、メディアの名誉のために言えば、最近は交ぜ書きが減ってきている。たとえば、以前は「改しゅん」「領しゅう」「ろっ骨」などと書いていたが、今は常用漢字表などにない漢字も使って「改悛」「領袖」「肋骨」と書き、ルビを振っている。
ところが、「改ざん」は「改ざん」のままである。改竄の「竄」が18画もあり、とりわけ鼠という字が難しいからだろう。でも、読者にとっては、たとえ書けなくても、読めればいい。ルビさえ用いれば、済むことだ。
もうひとつ、メディアの名誉のために付け加えると、僕が調べた限りでは、産経新聞と雑誌AERAは「改竄」と漢字を使っている。他のメディアも見習ってほしいものである。