年度替わりは「人が動く」季節。社内だけではなく、転職などで会社を替わる人も少なくないだろう。おのずと、歓送迎会も頻繁に開かれる。そんななか、「ただの派遣社員に、送別会なんてする必要ある?」という、管理職女性の投稿がインターネットで炎上ぎみの騒ぎになっている。
「ひどい! 正社員の派遣差別だ」「派遣社員は使い捨てか、送別会も開いてもらえないのか!」という反発の声が圧倒的だが、「派遣社員の送別会を開きにくい事情もわかる」との声も。アナタの職場では、どうですか?
「有志で、飲み会感覚で」開いてくれた送別会
話題のきっかけは、女性向けサイト「発言小町」(2018年2月28日付)に載った「派遣社員の送別会、しなくていいですよね?」と題する投稿。
「私が管理職をしている課で2年間働いていた派遣社員のAさんが3月で辞めます。仕事ぶりも申し分なく、明るくて良い方でしたが、社員になれないとわかると『辞めます』。他の部署の人とかなり親しくしていたようで、その人たちから『Aさんの送別会はいつ? ぜひ出たい』と聞かれ困っています。何と言ってもただの派遣社員ですし、わざわざ派遣社員の送別会のために社員が集まるという感覚がわかりません」
この投稿には、「ただの派遣社員」という上から目線が感じられたためか、「激怒!」と言っていいほどの反発の声が殺到した。
「もう用済みの派遣ごときが社員様に送別してもらおうなんざ、100万年早いんだよ!って事ですよね」
「派遣社員だと差別するという考え、ありえません!」
「私の勤務先では派遣もバイトもパートもみんな同じ会社の仲間で、○○社ファミリーです。歓迎会、送別会など皆やっています。当たり前だと思っていたから、ショックです」
派遣社員自身からの声も相次いだ。
「私なんて、どこで働いても送別会がありました。1年だけの職場ですら飲み会をしてもらえました。今考えると、恵まれていたんですかね?」
「派遣歴10年以上、さまざまな派遣先でお世話になりましたが、恐縮なので無理して送別会を開いて欲しくありません。『有志で、飲み会感覚で』というのが一番うれしかった。今でもその職場の前を通ると、懐かしさがこみあげてきます」
派遣社員は「親睦会費」を払っていないから......
その一方で、ごく一部だが「投稿者の立場もわかる」という声があった。それはこういう事情から......
会社によっては社会保険とは別に「親睦会費」の名目で正社員の給与から一定額を天引きするところが少なからずある。親睦会費から退職や異動時の餞別や慶弔費、そして歓送迎会や忘年会などの宴会費用の補助金がでる。親睦会費は派遣社員からは徴収しないから、宴会に派遣社員が出ることに抵抗感がある正社員もいるようだ。
こんな声があった。
「会社の公的な送別会の場合、福利厚生で補助金が出ますが、派遣の場合には出さない会社が多いです。投稿者が言う『派遣社員に送別会は必要ない』には、社会的に立派な根拠があります」
また、派遣社員の「事情」を考慮する意見もあった。
「わが職場でも基本やりません。派遣さんは時間で働いてくださる方なので、面倒な夜の飲み会のお付き合いまで強要するのは気の毒。だから、派遣さんの送別会は基本、有志のランチです」
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、この投稿について、派遣社員の送別会を開いているどうか、大手企業・団体で働く2人の管理職を取材した。
公益団体で管理職をしているAさんは、
「うちの職場も昨日、3月末で辞める派遣社員と4月からくる新人職員、育休明け復帰の職員の歓送迎会をしたところです。派遣社員の送別会をするかどうかは各課で千差万別。うちの課は、正職員と派遣社員の仕事内容が違うので、課長以下全員参加する『公式』送別会はしておらず、親しい者だけの有志の送別会という形です。でも、時期が同じなら昨日のように正職員のための会に入れることもありますし、仕事内容が同じ課では、机を並べて仕事した仲間が課の一員として派遣社員の送別会をしています。
この投稿者には差別意識が感じられますが、それとは別に、辞める派遣社員が格別優秀で人望が厚かったとしても、投稿者が幹事となって送別会を企画したら、『公式』対応の前例になります。ほかの派遣社員も同様にしないと管理職として失格です。先例に照らして『公式』にするわけにいかないのなら、親しい人に幹事になってもらって有志の送別会を開き、自分は会費の一部を支援するなど、管理職として気持ちよく送り出してあげたらいいでしょう」
と、語った。
「美人」の派遣さんだから、エコヒイキ?
出版社の書籍編集部門の管理職のBさんはこう言う。
「うちの職場では、正社員も派遣社員もアルバイトも、チームを組んで本づくりをしていますので、派遣社員の送別会も正社員と同じように開き、和気あいあいと楽しく飲んで送り出しています。
しかし、販売部の、特に書店や取次から本の注文を受け付ける職場では、管理職以外は全員が女性の派遣社員。毎月のように入れ替わりが激しいため、職場で花束を渡すだけで、特に送別会は開きません。だいぶ前に男性管理職が、よくやってくれた派遣社員の送別会を開いたところ、『美人だから特別扱いした』との猛批判を浴びた『先例』が伝わっているせいもあるかもしれません」
気持ちよく送ってあげればいいのに、いろいろ難しい問題があるようだ。