留学はご褒美より、無休でも学びたい人の「手挙げ方式」で
竹中さん「大企業の労働組合の強いところと中小企業では、首を切られた人の補償金額に3ケタの格差があると言いますね。解雇の補償がない国は、OECDの中で日本と韓国だけです。こうした問題を正面から議論すると、解雇の自由化につながるという声が必ず起こってきます」
南場さん「当社(DeNA)もグローバル企業ですが、労働の自由化が大事な問題です。米国では事業をやめる判断に悩むことはありませんが、日本ではとても悩む。それとは逆の話ですが、IT業界は流動性が非常に高く、従業員に辞められないようにするにはどうしたらよいか、とあの手この手で引き止めるのに必死です。兼業や副業を認めるのもその一つです。
兼業の開放では、企業情報の守秘義務が問題になっていますが、IT業界ではこれだけ情報が流通していますから、他社に流布されても『どうぞ』という感じで構えるしかない。一個人から漏れるより、優秀な人がいなくなるほうが怖いです」
竹中さん「労働者の引き止めといえば、海外ではサバティカルといって、3か月や1年間の長期休暇や留学させる制度がありますね」
南場さん「大賛成です。優秀な人ほど外に出て学んできてほしい。リフレッシュしてハイパフォーマンスでやってほしいですが、戻ってきてくれないと困ります(笑)」
八代さん「サバティカルもいいですが、長期休暇を与えるなら、その間は無給にすべきです。有給の留学ではほんの一部の労働者への『ご褒美』になってしまうので、学ぶ意欲のある労働者が自発的に無給で休業を選択する『手挙げ主義』にすべきです。留学して資格を取ってきても、日本の企業では十分に昇給させてもらえないので、教育休業して資格を得て、会社に戻ったときに相応の処遇を得られるようにすることが、個人と会社の双方にとって望ましいでしょう。
これまでは会社に尽くす人を大事にしてきましたが、独りよがりの忠誠心など役に立ちません。むしろ実力があり、いつでも辞められるが、それでも会社が好きだから残る。そんな社員が増える企業が強くなるのです。どこにも行けないから残る社員など、いらなくなります」