「社員のみでプロジェクトをやるのは時代遅れになる」
竹中さん「まさに自由な働き方、雇い方を認めようという動きの中で、兼業や副業を認めようという議論も始まっています。南場さん、IT産業のディー・エヌ・エー(DeNA)ではいかがですか」
南場智子さん「いまは『プロジェクトに優秀な人を集める』ことが企業の勝利の方程式です。入社に限らず、参加いただくことが重要です。10年後には、プロジェクトごとに集合、解散を繰り返し、社員だけでプロジェクトを進めるのは時代遅れになるでしょう。
エンジニア型の人は中央集権的な管理を嫌います。自由が大事。優秀なエンジニアに働いてもらうためにも、DeNAでは副業、兼業は大歓迎です。ただ、経営者としてツライのは、たとえばDeNAの社員として7割、他社の社員として3割で働いた場合、健康を害した時の責任を、誰がどうとるのかが問題になります。兼業を認めると、健康管理にけっこう事務コストがかかるのが悩ましい点です」
竹中さん「残業など働く時間の問題はいかがですか?」
南場さん「インドや中国では現在、猛烈に人々が働いています。私も55年の人生の中で一番の宝物は、起業する時に会社に寝袋を持ち込んで働いた時期です。球団(横浜ベイスターズ)の社員が、プロ野球のシーズン中にイベント企画で、『もっと残って働きたい』と頼むのに、蹴飛ばすように帰らせています。労働基準監督署に怒られるので大きな声では言えませんが、本人の成長のためにこれでいいのかと疑問を持ちます」
荻島浩司さん「シリコンバレーを訪問した際、労働法の弁護士に現地の人々の働き方を聞くと、時給制が1割、裁量労働制が6割、専門技術で起業、独立するインディペンデント・コントラクターが2~3割と言われました。日本の『月給制』を説明しても理解してもらえない。ひと月の残業時間を計算して残業代を払うと言うと、『それは時給制ではないか』と驚かれました。
日本は、一人ひとりが働き方を変え、プロフェッショナルにならないといけない。五輪選手が1日の練習時間を8時間以内に制限したら、おかしいし、ひどい話です。会社に来て8時間働くことだけが、『働き』なのでしょうか? 自分のやりたいことのために働く。私個人は、仕事はゲームや遊び、おもしろいことをやっているという意識でやっています。なので、24時間働いても苦になりません」