「働き方改革」の問題が大きな議論になっている。AI(人工知能)などの最新テクノロジーが人間の仕事に取って代わろうとしている現在、私たちはどう働いたら幸せになれるだろうか――。
社団法人・働き方改革コンソーシアム(CESS)が2018年2月20日、東京・虎ノ門ヒルズで開いた「働き方改革実現会議」シンポジウムの議論を前編と後編の2回にわたり、紹介する。
NEWテクノロジー時代の働き方(後編)優秀な人は大企業を目指さずベンチャーに挑戦を!
「何でもできる人は中途半端な人になる」
竹中平蔵さん「テクノロジーの進化の中で、人間はどうやって働いていくべきか、重要で深刻な問題になっています。それには、政府、企業、個人、そして社会が変わらないといけないということで、昨年(2017年)、米サンフランシスコに第4次産業革命センターができました。うれしいことに今年、その姉妹組織が東京にできます。『働き方』の議論を深めるよい機会になりました。そこで、まず労働政策が専門の八代さんに働き方改革の問題点を整理していただきます」
八代尚宏さん「これまでの人材の確保や育成は、新卒者を採用し、長期雇用と年功序列の制度のもとで、職場訓練によって熟練労働者をつくるという方法でした。その方法は高度成長期には成果を上げましたが、1990年代で終わりました。NEWテクノロジーの時代に入ると、何でもできる人は中途半端な人になるのです。
AIなどの導入によって、デジタル・ディバイド(コンピューター技術を使える人と使えない人の格差)が拡大。ルーティーンの仕事は機械が、クリエイティブな仕事は人間が、と二極化しています。工場の労働では1時間働けば確実に成果がわかります。しかし、クリエイティブな仕事は、時間で成果を測ることができません。そこで、これからは機械的な作業やデータ分析などの時間で働く労働はAIに任せて、人間は裁量労働制でクリエイティブに仕事をする時代になります。
ところが、この裁量労働制やホワイトカラーエグゼンプションは、『残業代ゼロ』と言われて非常に評判が悪い。しかし、現在は時間や場所にこだわらない自由な働き方が求められているのです」