史上最悪の大赤字から、わずか8年で過去最高の営業利益を上げるまでに立ち直った日立製作所。その背景には、従業員の仕事ぶりをすべて「見える化」する働き方改革があった。
自分の仕事の内容を客観的なデータで見せられると、変えようとする意識が高まるという。
同社の改革を進めたシステム&サービス統括本部のソリューション開発営業部部長の坂内聡さんが語った、一般社団法人働き方改革コンソーシアム(CESS)が2018年2月20日に東京・虎ノ門で開いた「働き方改革実現会議~イノベーションと日本のV字回復」で講演した内容を紹介する。
改革の原動力は「数字は人を黙らせる!」
日立製作所は2009年3月期決算で、7873億円という日本の製造業史上最悪の赤字を計上した。それが8年後の2017年3月期決算で、同社では過去最高の営業利益となる6600億円を叩き出すまでに復活した。
その間、川村隆氏、中西宏明氏、東原敏昭氏ら3代社長のリーダーシップのもと、全従業員が血のにじむ努力で働き方改革を進めてきたが、その原動力になったものは何か――。
坂内聡さんは、こう強調した。
「働きやすいオフィス環境づくりやコミュニケーションの活性化、管理職の意識改革など、さまざまな取り組みを進めてきたが、特に重要視したのは『数字は人を黙らせる!』ということです。データによって、さまざまな仕事の現実を目に見えるようにしたこと、つまり可視化が従業員を大きく動かしました」
誰でもムダな会議を減らさなくては、優秀な人材を採用しなくては...... ということはわかる。しかし、どこから手をつければよいか。具体的な数字やグラフで示さないと組織はなかなか変わりにくい。
たとえば、新卒者の採用ではピープルアナリティクス(行動のデータを分析し、採用や配置などに生かす技術)を活用し、過去に入試試験を受けた膨大な学生の記録や社員のデータから、人材の性格タイプを4つに分けることから始めた。そして、各タイプの中でとがった人材、優秀な人材を採用するために、面接時の選考ポイントを絞り込むなどして、選考スタイルを変革したのだ。
それにより、日立社員には増やしたいゾーンのタイプの人材が少ないことをグラフで示し、新卒者採用で欠けているタイプの人材を増やしていった。
また、都内各地にサテライトオフィスをつくる時も社員のデータを「見える化」した。7400人の定期から出発駅、通勤代、通勤時刻のデータをAIで計算、コストが一番かからず、しかも便利な候補地を地図上に表示。東京都町田市から設置することにした。