勝手に騒ぐ人間に「偽善」臭さ感じる
加えて、最近の動物園は絶滅に瀕している動物の「種の保存・繁殖」に役立っているとの主張もある。たしかに、上野動物園はシャンシャンという新しい生命の誕生に一役を買っている。だが、種の保存・繁殖は本来の生息地の中でこそ行うべきであろう。
そして、上野動物園や近くの商店街が何よりも期待しているのは、シャンシャンに引かれて入園者が増え、その人たちがカネを落としてくれることである。地元の百貨店では100万円の純金製誕生記念メダルがけっこう売れたそうだ。シャンシャンを歓迎しない手はないのである。
そうかと言って、僕は何も「囚徒をすべて解放して、野生に戻すべきだ」とか「動物園をなくすべきだ」とかまで言い張るつもりはない。ただ、シャンシャンが囚徒であることを棚に上げて、「かわいい」「抱きしめたい」「上野の宝だ」などと人間が勝手に騒いでいる。そのことに「偽善」の臭いを強く感じるのである。