2017年12月19日、東京の上野動物園で生後6か月のジャイアントパンダの赤ちゃん「シャンシャン(香香)」が一般公開された。同動物園で生まれた赤ちゃんパンダの公開は、実に29年ぶりとのこと。以来、上野かいわいはパンダで沸き立ってきた。
動物園は公開初日から今年1月末まで、抽選方式で観覧者を選んだが、年内の倍率は69倍という加熱ぶり。抽選には外れたが、「雰囲気だけでも味わいたい」と、公開初日の動物園にやってきた人もいた。
シャンシャン、しょせん檻から出られまい
年末から年始にかけて、JR上野駅の構内では「パンダフル ウインター」という表示が目を引いた。「パンダフル」は「ワンダフル」をもじっている。エキナカ(駅中)の飲食店では「パンダフル グルメ」や「パンダフル スイーツ」が売られていた。
新聞やテレビもパンダ人気を盛り上げるのに懸命のようだった。公開前の新聞には「シャンシャン 外遊び大好き」「会いに来て 驚かないよ」と、シャンシャンがまるで公開を心待ちにしているかのような見出しが躍った。公開されると、「デビュー ママと一緒に」と、母子の写真が紙面を飾った。
しかし、シャンシャンが外遊び大好きと言っても、それはしょせん、檻(おり)や囲いの中でのことだ。シャンシャンは雄の「リーリー(力力)」、雌の「シンシン(真真)」の両親とともに、いわば「囚徒」なのである。しかも、死ぬまで外に出ることは許されない。
パンダに限らず、動物園ではライオンも象も猿もすべてが囚徒である。人間の楽しみのために、動物たちをいじめているとも言える。
そんな動物園なのだが、いくつかの擁護論がある。まず、子供に動物と「親しむ」機会を与えられるし、珍獣などを見ると見聞が広がり、「教育」になるとの主張である。
しかし、壁や柵に遮られて、直接には動物と触れ合えないのだから、「親しむ」はいささか大げさである。それに、本来の大自然にいるのではなく、檻に閉じ込められた動物は「本物」とは言い難い。