エンゲル係数が高いほど「生活水準は低い」中学生でも知っている
裁量労働制については、厚労省のデータねつ造疑惑が脚光を浴びたこともあり、多くのメディアが報じている。しかし、じつは安倍首相の問題答弁は裁量労働制に関したものだけではない。
1月31日の参院予算委員会では、野党から「安倍政権になってエンゲル係数が上昇している」と追及されると、安倍首相は「物価変動や生活スタイルの変化が含まれていると思います」「食への消費が拡大し景気回復したということ」などと答弁した。
エンゲル係数は世帯ごとの家庭の消費支出に占める飲食費の割合を示すデータ。一般的には生命維持に関わる飲食費は、極端な節約が困難なため、エンゲル係数が高いほど「生活水準は低い」というのが中学生でも知っている常識だ。
それを安倍首相は、食の変化であり、食の消費が拡大して景気が回復していると答弁した。「経済学上の珍説」ともいえる驚くべき答弁だ。
1月22日の安倍首相の施政方針演説では、「同一労働同一賃金をいよいよ実現する時がきた。雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、『非正規』という言葉をこの国から一掃していく」と意気込みを語った。
しかし、アベノミクスがスタートした2012年から16年までの4年間で、非正規雇用者は207万人も増加している。この間の正規雇用者は、わずかに22万人の増加にとどまっている。 安倍首相の言葉には、どうしても言い訳じみた空虚さを感じてしまう。(鷲尾香一)