ボーナスを貯めて株式投資をはじめた。そのとき最初に購入して、儲けさせてもらった銘柄が「小糸製作所」だった。「まずは自分の関わりのある企業(業種)から」という株式投資の「教え」に準じたのだが、株式投資のおもしろさを教えてもらった銘柄でもある。
1970(昭和45)年当時は米ビッグ3(ゼネラルモーターズ、フォード、クライスラー)が全盛期で、「日本の乗用車メーカーは、1~2社が生き残れればよい」といわれていた。外資による株式公開買い付け(TOB)に対して、日本の自動車メーカーは系列企業の株式持ち合いなどで防衛。自動車業界は、株式市場で注目を浴びていたと記憶している。
進化を遂げるヘッドランプ センサー内蔵で「死角を最小化」の新製品
小糸株を買ったのは1972(昭和47)年3月。170円で1000株を購入。その年の12月に195円で売却した。売却益は2万5000円。学校で学んだ経済学で得た知識をもとに銘柄を選別。自分の知識が通用し、その結果として売却益を得ることができたことに、株式投資のおもしろさを知った。
当時の初任給が3万円ほどだったので、ちょっと驚きもした。運がよかったのかもしれない。
そんな小糸製作所が今、どのように変貌を遂げているのか気になって、2017年10月30日、久しぶりに江東区有明の東京ビックサイトで開催されていた「第45回 東京モーターショー 2017」に出かけた。
会場の小糸製作所のブースには、さまざまな形のヘッドランプやテールランプが展示されていて、種類の多さに驚かされた。しかし、それは現在にはじまったことではない。1968年当時から、「自動車用ヘッドランプ」といえば、小糸製作所だった。最近はあまり目にしていないが、テレビCMも大々的にやっていたから、株に興味のある・なしにかかわらず、よく知られていたと思う。
この日も、会場で配布されていたパンフレットには、開発中のセンサー内蔵型ランプについて、「車両四角のヘッドランプおよびリアランプに、周囲監視センサー(LiDAR)を内蔵することで、車両周囲360度の歩行者や車輛の検知能力が向上して、さまざまな走行状況において、交通事故の御前防止を図ります」と記述されていた。
ヘッドランプにセンサーを内蔵するメリットには、「死角の最小化」があるという。
どんなクルマにも「ヘッドランプ」は欠かせない
自動車用ヘッドランプは、電球にはじまりハロゲンランプ、そしてLED(発光ダイオード)へと進化を遂げている。
2017年12月28日付の日本経済新聞「ニュース一言」に、小糸製作所の三原弘志社長の記事が掲載されていた。その中で、三原社長は「ヘッドランプの収益性を高めてきたLED化が一巡しつつある。自動でランプの配光先を調整する、電力を減らすといった技術が焦点になる」と指摘。そのうえで、「今は天井を設けず、先行開発のリソースを手厚くする」と語っている。
今後も新しい技術の開発が期待できそうではないか――。
さらに、2018年1月27日付の日本経済新聞には、「小糸製、最高益に、今期最終31%増」の見出しが躍っていた。業績は好調で、18年3月期は受注台数ベースで、LEDがランプ全体の30%(前期は21%)を占める見込み、という。しかも、単価の高いLEDランプのウエートが増え、企業収益に大きく貢献しているようだ。
ガソリン車から、電気自動車や燃料電池車、さらには自動運転車へと急展開している自動車業界にあっても、こと「ランプ」ばかりは、あらゆるクルマに必要な部品である。その強みに加えて、クルマのヘッドランプにも自動運転に関わる技術開発の波は押し寄せていている。
現在、トヨタの「プリウス」には、LEDヘッドランプは標準装備されている。また、たとえば比較的低価格帯の「カローラフィルダー」でも高価格帯クラスの車両には標準装備、またはメーカーオプションの設定がなされている。いずれにせよ、省エネ効果の高いLEDランプの装着率は、高くなることが考えられる。
2月20日の東京株式市場は、日経平均株価が前日比224円11銭安の2万1925円10銭で引けている。1月末ごろから、株価の値動きは日々荒くなっている。落ち着かない相場だが、小糸株も大きく値下がりするような場面があれば、再び買ってもいいと思っている。(石井治彦)
2018年2月20日現在 保有ゼロ
昨年来高値 2018/01/23 8380円00銭
昨年来安値 2017/04/17 5220円00銭
直近引終値 2018/02/20 7400円00銭