2018年1月25日、UBS中国の証券研究チーフである侯延コン(王へんに昆)氏は『フィナンシャルタイムズ中国語版』に投稿し、所属研究チームによる一つの結論を紹介した。
それによれば、中国は、IT(情報技術)・新型工業・家電などの分野でのイノベーション(技術革新)の勢いによって、近い将来、国際的なリーダー企業を動揺させるほどの影響力を持つことになるという。ただ、そこには脆弱な部分も垣間見える。
4分野の過去10年の成績を分析した結論
UBS中国の証券研究チームは特許・研究論文・研究開発・国家政策の4つの分野から、過去10年にわたる各業界の成績を評価、分析。以下の基本結論を導き出した。
(1)冶金・建築などの「オールドエコノミー」で、中国は国際競争力を持っている。
(2)IT(スマートフォン部品・インターネット・AI・非メモリ半導体)と新興産業(電池・EV・太陽光発電・ナノ技術・エコ)の面では、中国はすでに国際的な一流企業と競争することができる。
(3)一方、ハイエンド(高性能・高価格)の製造業と医薬・治療産業では、かなりの程度の進歩を遂げたが、国際的な一流レベルにはまだほど遠い。
この研究チームは米国特許局の数十万件の特許を分析した。2015年には、中国から米国に出願した特許のうち8116件が認可を受けており(2010~2015の年間平均増加率は25%)、米国特許の許可数ランキングでも、中国は2007年の第15位から第5位まで上昇し、イギリスとフランスを上回った。
米国より多いIT分野の論文数
米国市場で認可された特許の半数強はIT産業と密接な関係があり、UBS中国・証券研究チームによると、米国の業界が中国の技術を認めたということの証のみならず、中国IT産業の米国向け輸出に対する準備が進みつつあると理解することもできる。
また、中国のIT分野関連の2016年の科学研究論文発表数は米国より26%も多く、引用された回数から見る限り、その質は米国に比敵するものであるという。
とくに、電信通信設備・スマートフォン分野などの無線インフラにおいて、中国はグローバルな競争力を備え、先進国のライバル企業と互角になっている。LCDモニターについても、中国は中期的には世界中のリーダー企業に挑戦できる位置にある。同研究チームによると、AI・IoT(モノのインターネット)・機械学習・自動運転などの学際的科学分野において、中国はグローバル市場のリーダーになることが期待できるという。
同時に、中国のエコ・ナノ技術の世界的なイノベーション競争力もますます強化されてきたという。例を挙げると、米国市場に占める中国ナノ技術の特許のシェアは、日本と韓国に次いで4.5%を超えた。また、パワーバッテリーと太陽光発電分野では、中国企業が研究開発費もほかの国際的なライバル企業より高くなっているとしている。
脆弱なハイエンド分野
しかし、各分野でのハイエンド製品の製造における中国のイノベーション能力はまだ弱い。第一に、この分野での中国の海外特許数の少なさは世界をリードする同業者と技術的に大きな差があることを示し、航空宇宙・国防を含め、製造設備の科学研究レベルも、まだ競争力がない、としている。
製造業において、唯一注目されるのは家電業界で、中国国内の家電特許出願数は日本より58%多く、世界でトップとなっている。(北京在住ジャーナリスト 陳言)