「AIが導入される時代に、自分の働きがいは何なのか」
高倉さん「はい。それには社員一人ひとりが自律的に働き、しっかり責任を持つことが大事です。グローバル化が進む米国西海岸の企業では、メールがすごく短い。責任が明確、かつシンプルです。当人同士だけでパッパと物事を決め仕事が早く終わります。
会議も立ってやるところが多く、砂時計を持ち込み、『3分以内で説明しろ』です。当社でも立ち会議を増やす一方、時間や資料など会議にかけるエネルギーを相当減らそうとしています」
白河さん「2017年度から仕事削減のルールを決め、1日32分間勤務時間を減らし、16時半退社を成功させたわけですが、仕事量の圧縮は具体的にはどうしたのですか」
高倉さん「まだ道半ばですが、仕事をつくり出すより、やめるほうが難しいです。自分を否定することになりますから。そこで労働組合と話し合い、いったん仕事をゼロベースにして、まず労働時間の短縮を決めました。形から入ると、おのずから重要な仕事にフォーカスして優先順位を付けざるを得なくなります。どの仕事を捨てるか真剣に考えるようになります」
坂東さん「ムダと思える仕事を一生懸命やるのが、真面目な人でエライと思われるのが日本企業の風土ですからね」
高倉さん「じつはムダな仕事をなくすより、何をやるかが大事です。たとえば、AIがどんどん導入される時代に、自分は何ができるのか、自分の生きがい、働きがいは何なのか、突き詰めて考える必要があります」
白河さん「女性の活用がいま言われていますが、そうなるとオジサンの再活用も重要になりますね(笑)。人材開発の専門家の中原淳・東京大学准教授は『これからは人生に3回大学に行く時代が来る』と言っています。青春時代、シニア時代、そして企業の中堅で働いている時の学び直しです。常に刺激を受けることで自分自身が活性化していくわけです。大和証券のように、社員の学び直しに補助する企業も増えてきました」
高倉さん「それと若い優秀な人材をどう確保するかが大事です。米国西海岸のバイオサイエンスの中小企業では、人材獲得合戦がスゴイです。社長たちが自分の評価やレーティング(格付け)をコメント付きで公開している。それがシェアされ、優秀な若者たちが企業を選択する判断材料になっています」
白河さん「日本の就活生のサイトでも、トップのメッセージや会社を評価するコメントが盛んになりましたね」
坂東さん「トップだけでなく、現場の管理職も部下にレーティングされたらいいと思います」
高倉さん「当社では社長の西井も部下から評価されます。ランダムに選んだ300人が評価書を提出して、西井も1枚1枚真剣に読んでいます」