社長自ら主要取引先を訪問
こうした大胆な働き方改革を始めたきっかけは何か――。
西井孝明社長は、2013年にブラジルの現地支社長として赴任した時に驚いた。ブラジル人従業員はみな、夕方にはキチンと仕事を終わらせ、晩ごはんを家族と一緒に食べていた。ラテン民族はのんびりしているという先入観があったが、とんでもない、彼らは時間管理にメリハリをつけ、生産性が高かったのだ。
味の素は、ブラジルやインド、欧米など130か国に展開。世界中に3万3000人の社員がいる。ブラジルでも各国の企業が優秀な人材の争奪戦を繰り広げている。
民族、習慣、文化が違う3万3000人をどうやって束ねていくか――。日本式の会社に忠誠心を求め、夜遅くまで残業して成果を出す「働き方」では、世界に通用しないことを痛感したという。
味の素は、2020年にグローバル食品会社でトップ10入りを果たすことを目標に掲げている。そのための人材確保、世界に通じる働き方の確立が、この改革の狙いだ。
とはいえ、早帰り(残業時間の短縮)には、当初は社内のどのセクションからも抵抗にあった。なかでも営業部門は強く反発。これには西井社長自らが、主要取引先を訪ね、説明して回った。
また、研究所部門では「自宅では仕事にならない」と反対していたが、レポートを書く仕事の日などを在宅自宅にするなど、仕事の効率化を図った。