NHKの調査「働き方改革 残業代減る分の対応は? 主要100社に聞きました」によれば、残業自粛で減った残業手当分を賃上げやボーナスなどで還元する企業は7%のみとのこと。
「なんてひどい会社だ!」と怒っている人もいるようなので、筆者なりにフォローしておこう。結論から言えば悪いのは、100%労働組合の側だからだ。
会社は「残業代を払う前提で基本給を低くする」作戦
以前から述べてきたように、企業は社会保険料や残業手当をすべて含めて人件費ととらえている。そして、その額は経営環境により決まっているから、お上が法律で増やそうとしても増やせないし、従業員がいつもの2倍長く残業しからといって(労働時間に成果の比例しないホワイトカラー職であれば)人件費の総額は増やせない。
というわけで、残業代をきっちり払うような大企業ならどこでも、あらかじめ従業員の基本給を低く抑え、残業手当として上乗せしてトータルでとんとんになるよう賃金制度を組んでいる。
従業員からすれば残業しないと元がとれないし、会社からすればしてほしくもない残業をチンタラされるわけで、誰も幸せにしない不幸なシステムと言っていい。
では、それを解消するにはどうするか。ホワイトカラーエグゼンプションのように「労働時間ではなく成果で支払うような制度改正」を行い、残業代ではなく成果給という形で上乗せする以外にない。
ところが、過去10年以上、一貫して「成果なんていやだ、時間で支払ってくれ」と強硬に主張し続けてきたのは、他でもない労組だ。
というわけで、会社は21世紀の今も「残業代を払う前提で基本給低くする」作戦を続行し、労働者は「低く抑えられた報酬を取り戻すために頑張ってチンタラ残業する」戦術で対抗し、生産性向上にまったくつながらない不毛な戦いが続いているというわけだ。
ただし、一連の不幸な労災が続いた結果、社会全体に残業自粛の波が押し寄せることとなった。労働者が目いっぱい残業して取り戻そうにも取り戻せないというのが現状である。