いわゆる「原野商法」の被害に遭うケースが急増している。
しかも、土地ブーム期に「将来値上がりする」という勧誘に乗って何もない原野を買わされた人々を対象に、今度は売れないまま放置状態の原野を「買い取る」という、「原野商法は二度だます」といわんばかりの手口なのだ。
原野を売る代わり、新しい原野を買わせる「下取り」詐欺
「原野商法」とは、列島改造論やバブルによって土地ブームが巻き起こった1970年代から1980年代にかけて全国を席巻した悪徳商法。原野や山林などまったく価値がない土地を、「新幹線が予定されている」「必ず値上がりする」などと、新聞折り込みチラシや雑誌広告などを使った勧誘が盛んに行われた。また、被害者も山奥の現地を見に行かず、買う人が少なくなかった。
働き盛りのときに、原野が値上がりすることを夢見て購入した人も、現在は70代~80代以上が多くなった。すると、2000年代初めから、今度は「塩漬けの土地を高値で買い取る」という原野商法の被害が増えてきた。
国民生活センターの「原野商法の二次被害報告」(2018年1月25日に発表)によると、2017年は、調査を始めた2007年以降、被害相談が最多の1076件で、07年の2.5倍、1件当たりの被害額の平均も最多の467万円に達し、07年の2.2倍になった。
被害者の67%が70歳以上の高齢者で、90歳以上も4%いた。
トラブルの大半は「売れない土地を高値で買い取る」という電話勧誘をきっかけとする「売却勧誘型」だ。
このタイプをさらに分析すると、契約内容を詳しく説明せずに、「手続きや税金対策に費用がかかる。そのために別の土地を購入したらよい」と誘い、いつのまにか原野の売却と同時に新たな原野購入の契約をさせる「下取り型」が増えているらしい。
「下取り型」は、クルマでいえば、中古車(所有している原野)を売る取引だったのに新車(新たな原野)購入の取引にスリ替わり、差額分を騙し取る。原野の売却と新たな土地の購入がセットになる手の込んだ詐欺だ。
たとえば......
「『東京五輪までにその土地一帯に複合レジャー施設を造る予定だ』と言われ、話を聞いた。その際、『他の土地を買えば、売却時税金がなくなる』『購入費用の5000万円は税金対策後に渡す』と説明された。よくわからなかったが、買い手がつかない雑木林が売れるならと400万円を渡して契約書に署名した。
その後、業者と連絡が取れなくなり、改めて契約書を確認したところ、雑木林を1200万円で売り、新しい原野を1600万円で購入する契約になっていた。つまり支払った400万円が、自分の原野売却と新しい原野購入の差額分になっていた」(2017年5月・東京都・60代女性)。
「下取り型」は、巧妙な説明によって売却額より高い新たな原野を買わせて差額を騙し取る手口。高齢者が狙われるのが特徴で、本人もよくわからないまま契約に署名してしまうから、カネを払うと後の祭りになる。なかには「クーリング・オフ(訪問販売などの特定の取引に限り、契約後の一定期間内であれば違約金なしで解約できる制度)の適用外」という項目に署名させられた人もいる。