「ジョブホップ」とは、2~3年のペースでジョブをホップする、つまり職を転々とすること。転職を繰り返し、現状よりも高い給料や今よりもレベルの高い仕事を得るといった、世に言うキャリアアップの手法です。
そんなジョブホップを3回も繰り返すと、その人はジョブホッパーと呼ばれたりします。
「転職」につきまとうマイナスイメージ
世界的に見ると、よりよい条件を求めて転職を重ねること自体は、働く人の当然の権利としておおむね受容されています。
ところが、日本では違いました。ただ、徐々にジョブホッパーで何が悪い? 「転職は3回まで」とか勝手なルールを押し付けるな...... との意見を耳にするようになりました。現在の転職市場は「売り手市場」なのでジョブホップするには格好のタイミングな気がします。ただ、そこまでジョブホップする人はいないようです。
どうしてなのか? 一緒に考えてみましょう。
そもそも、日本社会は転職を「1回でもする」ことにマイナスのイメージを抱く傾向がありました。とくに年齢があがって40代後半以降になると顕著。そうは言っても、この世代で転職する人は少なからずいますが、消極的な選択と考える傾向があります。
取材した40代後半の人たちで転職をした人は、会社が傾いたとか、配属されていた事業部門が撤退したとか、「転職をしないに越したことはない」が致し方ない事情から転職した人が大半でした。
それは自分が働いてきた時代に、新卒採用が会社で「特別採用」されてきたからかもしれませんし、そうだとすれば、この世代が意識を変えてジョブホップするのは難しいかもしれません。ならば、もう少し若い世代で考えてみましょう。
振り返ると、2000年以降に新卒の就職氷河期で希望する会社に就職できない、あるいはミスマッチとしか言い切れない会社でガマンした学生が大半...... という時期がありました。
ちょうど、1975年~89年までに生まれた「ジェネレーションY」とか「ミレニアル」と呼ばれる世代が就職活動をした頃のこと。現在では30代半ばくらいの方々。この世代あたりになると、ジョブホッパーも登場します。
増えそうで増えない「ジョブホッパー」のワケ
景気が回復したタイミングでいい待遇、素敵なキャリアを目指して転職を1回。そこから、2回3回と繰り返す人が登場。そのため、現在30代半ば世代では取材していてもジョブホップに対して比較的肯定的な意見の人が多く見受けます。
そこから若手社員にまで対象を広げていっても同様。ならば、ジョブホッパーは認知されて、増えていくのか? といえば、そうとは言い切れません。
少々脱線しますが類義語として挙げられる言葉に「キャリアビルディング」があります。言葉のとおりキャリアの形成を目的として転職を繰り返すこと。計画性があり、収入もしくはポジションがアップする、という特徴があるといわれています。
どちらかといえばジョブホップよりもいいイメージを抱く人が多いようですが、筆者は違わないものと捉えています。
さて、話を戻して、ジョブホッパーは増えるかといえば、なかなか増えそうにありません。
その理由は、採用する会社の判断基準でジョブホッパーを認めないから。会社の採用プロセスの一次選考は履歴書などの書類になりますが、そこでスクリーニングする条件に転職回数が厳然と入っている会社が大半です。
この条件を外して(あるいは緩和して)もジョブホップするには「根性がない」「何か問題があるに違いない」と思い込みがち。残念ながら仕事ぶりやキャリアから考えれば、採用すべき人材を取り逃す可能性が大でしょう。
ジョブホップしたくてもできないのは、会社が受け入れない状況に問題がある気がしてなりません。
ただ、会社もジョブホップを頭ごなしに否定する余裕はなくなりました。人手不足に、働き方改革。ジョブホップしてきた人に対して、その背景を理解して、会社といい関係で仕事ができるか? 見極めようとする意識改革が少しずつすすんでいるようです。
これまでの転職経験が次の職場でどのように活かされる可能性があるのか? 面接の機会に探ろうとする会社が増えてきました。こうした流れに合わせて、自分が得たい処遇やキャリアの主張だけでなく、「これまでの経験がどのように会社で活かせるのか」を考えて、伝えることで会社との理解度も高まり、ジョブホッパーが活躍の機会も広がるのではないでしょうか? (高城幸司)