政府が「夜遊び」のススメ!? 日本経済を活性化する起爆剤はコレだ

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   訪日外国人観光客の2017年の年間消費額が、過去最高を更新して、初めて4兆円を突破したと、観光庁が2018年1月16日に発表した。

   こうした訪日外国人による消費、いわゆる「インバウンド消費」は順調に伸びているものの、政府はこれを2020年までに8兆円にするとの高い目標を掲げており、拡大の余地は大きい。そこで、いま注目されはじめているのが「ナイトタイム・エコノミー」だ。

  • 「ナイトミュージアム」では夏にビアバーを設置(写真撮影:木奥惠三氏)
    「ナイトミュージアム」では夏にビアバーを設置(写真撮影:木奥惠三氏)
  • 「ナイトミュージアム」では夏にビアバーを設置(写真撮影:木奥惠三氏)

TOKYOの夜は品川エリアが熱い

   「ナイトタイム・エコノミー」とは夜間の経済活動、「夜遊び経済」のこと。一般に、ニューヨークやロンドン、シンガポールや香港などの国際都市と比べて、日本の都会の夜の観光資源は乏しいとされる。

   観光庁が2017年10月に発足した「『楽しい国 日本』の実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議」でも、「夜の観光資源の活用は、サイクルツーリズムや酒蔵ツアーなどと並行して、検討すべきテーマのひとつ」(観光庁)としてあげている。

   仮に、訪日外国人観光客が夜に1万円を余分に消費すると、2020年には年間4000億円が見込めるとされ、それに伴う宿泊費や交通費などの消費も増えると期待されている。

   こうしたナイトタイム・エコノミーのひとつとして、取り組まれているのが、「ナイトミュージアム」だ。多くの国立美術館や博物館では、すでに金曜日に加えて土曜日も「20時まで」開館しているが、東京国立近代美術館(東京都千代田区)では2017年7~9月に「MOMATサマーフェス期間」を設けて、金曜・土曜の開館を1時間延長して「21時まで」とした。

   2017年のサマーフェスが開催された期間の、金曜日の17時以降の入館者数は前年同期と比べて2倍を超えたという。さらに7月末から8月末まで、前庭にキッチンカーを入れて「ガーデンビアバー」を設け、庭で飲食できるようにしたところ、好評で10月1日まで延長された。

   東京国立近代美術館は、「日本人の来館者だけでなく、外で飲食をすることの多い外国人の方にも楽しんでいただけました」と話す。

   一方、品川プリンスホテルでは2017年12月に、ホテルの最上階に「DINING&BAR TABLE 9 TOKYO」をオープン。9つのダイニングとバーで構成され、そのうち3つのバーエリアは朝4時まで営業するようにした。この3つのバーエリアでは、12月27日までの約半月で当初の動員目標を50%上回る盛況ぶりだった。

   品川プリンスは、「(夜遊びの)行き場のない人たちにも来ていただけている」と話している。

「満天の星空」を苗場スキー場で!

   品川プリンスホテルの「ステラボール」では、現在、南米アルゼンチン発の体験型エンターテイメントグループ「フエルサブルータ」による、踊りや演奏などのパフォーマンス「WA!! Wonder Japan Experience」を公演。通常の日本のショーでは、夜の部の開演時間は18時か、遅くても19時までのところが多いが、「フエルサブルータ」は、平日の開演時間を19時、金曜日は20時からに設定している。

南米アルゼンチン発! 体験型エンターテイメントグループ「フエルサブルータ」
南米アルゼンチン発! 体験型エンターテイメントグループ「フエルサブルータ」

   公演がスタートした2017年8月から10月末までの3か月間で、観客数は10万人を突破した。広報担当者は、「海外の方たちからも大変好評で、最近では観客の約3割程度が外国人となっています」と話す。

   また、プリンスホテル系列では、苗場プリンスホテルのある苗場スキー場で、満天の星空や月明かりに照らされた雪原を体験する「ナイト遊覧ツアー」(18年3月25日まで)や、函館大沼プリンスホテルのスノーラフティングボードでスターウォッチングを楽しめる「ナイトクルージング」を用意。富良野プリンスホテルに隣接するナイトアクティビティーエリア「ふらの歓寒村」では、犬ぞり体験ができる(18年3月11日まで)。

   西武ホールディングスによると、プリンスホテルの2017年1~11月の訪日外国人宿泊客数は前年同期と比べて約7.5%増の約102万3000人。インバウド売り上げ(室料収入)で約15.6%増えた。

大阪府は「ナイトカルチャー」で盛り上げる

   大阪府は2017年11月に、夜間公演などのナイトカルチャー事業者向けに、補助金の交付をはじめた。観光客の夜の観光ニーズを取り込みながら、補助金を活用してもらい、企業に積極的にナイトカルチャーの創出に取り組んでもらう狙いだ。

   JTB西日本は、OSK日本歌劇団と松竹、松竹芸能の3社と共催して17年12月から、ノンバーバル(非言語) エンターテイメント「REVUE JAPAN」の公演を始めた。開演時間は、金曜日の19時半からと21時半からの2回公演(日によって1回もあり)で、夕食を食べてからの観劇も可能だ。

ノンバーバル・ エンターテイメント「REVUE JAPAN」
ノンバーバル・ エンターテイメント「REVUE JAPAN」

   OSK日本歌劇団が披露する日本舞踏や殺陣、ダンスを組み合わせたもので、観客と一緒に「舞体験」をする演出もあり、JTB西日本では「写真を撮ってSNSにアップしてもらえるので、お客様にとても喜ばれています」と話している。

   JTB西日本は現在、映像やダンスパフォーマンスを組み合わせたライブエンターテイメント「OSAKA NIGHT REVOLUTION」を開催している。

   夜の観光資源を活用して、ナイトタイム・エコノミーを活発化させようという取り組みは少しずつ広がってきている。海外で「夜遊び」が活発なニューヨークやロンドンなどでは、こうした動きに合わせて、週末の地下鉄の24時間運用を実施している。

   東京都は猪瀬直樹・前都知事のときに都バスの24時間運行を試行したことがあるが、インフラの整備も課題になる。交通面なども含めて、官民が協力してこの取り組みを推進していくことが今後の成功のカギになりそうだ。(戸川明美)

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